「環境かんきょう分野ぶんやのノーベル賞しょう」 日本にっぽんのNGOの平田ひらた仁子さとこさんが選えらばれる

「環境かんきょう分野ぶんやのノーベル賞しょう」とも呼よばれる「ゴールドマン環境かんきょう賞しょう」に、石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょの温暖おんだん化かへの影響えいきょうなどを訴うったえてきた日本にっぽんのNGOの平田ひらた仁子さとこさんが選えらばれました。
日本人にっぽんじんの女性じょせいが受賞じゅしょうするのはこれが初はじめてです。

ゴールドマン環境かんきょう賞しょうとは

アメリカの財団ざいだんが1989年ねんに設もうけた「ゴールドマン環境かんきょう賞しょう」は、環境かんきょう保護ほご活動かつどうで功績こうせきがあった人ひとに贈おくられる国際こくさい的てきな賞しょうで、毎年まいとし、世界せかいの6つの地域ちいきで1人にんずつが受賞じゅしょうします。

15日にち、ことしの受賞じゅしょう者しゃ6人にんが発表はっぴょうされ「島嶼とうしょ国こく部門ぶもん」の受賞じゅしょう者しゃとして京都きょうと市しの環境かんきょうNGO「気候きこうネットワーク」の理事りじ、平田ひらた仁子さとこさん（50）が選えらばれました。

日本人にっぽんじんの受賞じゅしょうは23年ねんぶり3人にん目めで、女性じょせいとしては初はじめてです。

平田ひらたさんの活動かつどう

平田ひらたさんは、大学だいがく時代じだいに地球ちきゅう温暖おんだん化かの問題もんだいに関心かんしんを持もち、日本にっぽんの環境かんきょうNGOで20年ねん以上いじょう活動かつどうして、温室おんしつ効果こうかガスを大量たいりょうに排出はいしゅつする石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょの問題もんだいなどを発信はっしんしてきました。

東京とうきょう電力でんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつの事故じこのあと、50基きの石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょの新設しんせつや増設ぞうせつが計画けいかくされると、ウェブサイト上じょうにこれらの発電はつでん所しょの計画けいかく書しょや環境かんきょう影響えいきょう評価ひょうかの資料しりょうを公開こうかいするとともに、地域ちいきの住民じゅうみんが公聴こうちょう会かいに参加さんかするよう働はたらきかけました。

今回こんかいの受賞じゅしょう理由りゆうでは、平田ひらたさんの活動かつどうがきっかけとなり、2019年ねんまでに50基きのうち13基きの計画けいかくが中止ちゅうしとなったとして「40年間ねんかんにわたって毎年まいとし750万まん台だい分ぶんの自家用車じかようしゃによる二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつを削減さくげんしたことに相当そうとうする」とされています。

受賞じゅしょうについて平田ひらたさんは「私わたしだけではなく、この問題もんだいに声こえをあげる人ひとたちがいて協力きょうりょくし合あってきたからこそ、大おおきな動うごきにつなげることができたと思おもう。社会しゃかいや経済けいざいをどうやってクリーンな方向ほうこうにシフトしていけるのかを考かんがえ、これからも提言ていげんを続つづけていきたい」と話はなしています。

平田ひらたさんが選えらばれた理由りゆうは

今回こんかいの受賞じゅしょう理由りゆうには、金融きんゆう機関きかんの「脱だつ石炭せきたん」につなげるため、平田ひらたさんが株主かぶぬし提案ていあんを行おこなったこともあげられています。

平田ひらたさんは去年きょねん、海外かいがいの環境かんきょう団体だんたいなどの協力きょうりょくを得えて、みずほフィナンシャルグループに対にたいし、石炭せきたん火力かりょく発電はつでん事業じぎょうのリスクを指摘してきしたうえで今後こんごの方針ほうしんの開示かいじなどを求もとめる株主かぶぬし提案ていあんを行おこないました。

気候きこう変動へんどう関連かんれんの情報じょうほう開示かいじについての株主かぶぬし提案ていあんは海外かいがいで増ふえていますが、
日本にっぽんではこれが初はじめてとみられ、株主かぶぬし総会そうかいでは34.5％の賛成さんせいを集あつめました。

平田ひらたさんは、今月こんげつ開ひらかれる三菱みつびしUFJフィナンシャル・グループの株主かぶぬし総会そうかいでも同おなじような提案ていあんを行おこなっていて、どの程度ていどの賛成さんせいを得えられるかが焦点しょうてんとなっています。

ゴールドマン環境かんきょう賞しょうの受賞じゅしょう理由りゆうでは、平田ひらたさんの一連いちれんの取り組とりくみが、多おおくの日本にっぽん企業きぎょうが石炭せきたんから脱却だっきゃくするための大おおきな機運きうんを作り出つくりだしたと評価ひょうかしています。

平田ひらたさんは「ほかの国くにの政府せいふや企業きぎょうが脱だつ石炭せきたんへと方針ほうしんを変かえてきているが、日本にっぽんは石炭せきたんの問題もんだいにようやく気付きづき始はじめたという状況じょうきょうだ。日本にっぽん企業きぎょうの中なかでも石炭せきたんから転換てんかんしなければという認識にんしきは広ひろがってきたが、本腰ほんごしを入いれて経営けいえい計画けいかくを変かえることに足踏あしぶみしている企業きぎょうもあると感かんじる。気候きこう変動へんどうとの戦たたかいに沿そうスピードで覚悟かくごと行動こうどうができるのか、いま問とわれていると思おもう」と話はなしています。

過去かこの日本人にっぽんじん受賞じゅしょう者しゃは

ゴールドマン環境かんきょう賞しょうは、これまでに2人にんの日本人にっぽんじんが受賞じゅしょうしています。

1人にん目めは1991年ねんに受賞じゅしょうした、環境かんきょう保護ほご団体だんたい「熱帯ねったい林りん行動こうどうネットワーク」の事務じむ局長きょくちょう、黒田くろだ洋一よういちさんで、アジアの熱帯ねったい林りんの保護ほごに取り組とりくみ、政府せいふや企業きぎょうに木材もくざいの輸入ゆにゅう量りょうの削減さくげんを訴うったえたことが評価ひょうかされました。

2人にん目めは長崎ながさき県けん諌早いさはや湾わんの国くにの干拓かんたく事業じぎょうに反対はんたいし、干潟ひがたの保護ほごに取り組とりくんだ山下やました弘文ひろふみさんで、1998年ねんに受賞じゅしょうしています。

世界せかいで加速かそくする脱だつ石炭せきたんの動うごき

温暖おんだん化か対策たいさくの国際こくさい的てきな枠組わくぐみ「パリ協定きょうてい」が2015年ねんに締結ていけつされて以降いこう、世界せかいで「脱だつ炭素たんそ」、「脱だつ石炭せきたん」への取り組とりくみが加速かそくしています。

特とくにここ数すう年ねんは、投資とうし先さきを選えらぶ際さいに環境かんきょう問題もんだいや社会しゃかい的てきな課題かだいへの取り組とりくみを重視じゅうしする「ESG投資とうし」が広ひろがり、石炭せきたん火力かりょく発電はつでんなどに関連かんれんする方針ほうしんを見直みなおす動うごきが世界中せかいじゅうで相次あいついでいます。

2017年ねんにはフランスのBNPパリバが、2018年ねんにはイギリスのスタンダードチャータード銀行ぎんこうが、今後こんご新あらたに作つくられる石炭せきたん火力かりょく発電はつでんへの融資ゆうしの停止ていしなどを発表はっぴょうしました。

また、世界せかい最大さいだい規模きぼのアメリカの資産しさん運用うんよう会社かいしゃブラックロックは去年きょねん、石炭せきたん事業じぎょうからの収入しゅうにゅうが多おおい企業きぎょうの株かぶを放出ほうしゅつすると発表はっぴょうしました。

さらに、気候きこう変動へんどうの対策たいさく強化きょうかを求もとめる株主かぶぬしの声こえも高たかまっています。

去年きょねんからことしにかけて、機関きかん投資とうし家かなどがイギリスの金融きんゆう大手おおて、バークレイズやHSBCに対にたいして、気候きこう変動へんどう対策たいさくについての方針ほうしんを開示かいじすることや、化石かせき燃料ねんりょうに関にかんする融資ゆうしを減へらすことなどを相次あいついで求もとめました。

先月せんげつ行おこなわれたスーパーメジャーと呼よばれるアメリカの巨大きょだい石油せきゆ企業きぎょう、エクソンモービルの株主かぶぬし総会そうかいでは、0.02％の株式かぶしきしか持もたない新興しんこうの投資とうし会社かいしゃが、経営けいえい陣じんの気候きこう変動へんどう対策たいさくが不十分ふじゅうぶんだと主張しゅちょうし、みずからの推薦すいせんする取締役とりしまりやくを選任せんにんするよう求もとめる議案ぎあんが提出ていしゅつされました。

会社かいしゃ側がわの反対はんたいにもかかわらず、推薦すいせんされた4人にんのうち3人にんが選任せんにんされ、現地げんちメディアでは「石油せきゆの巨人きょじんの歴史れきし的てきな敗北はいぼく」と伝つたえられました。

こうした中なか、日本にっぽんでも、銀行ぎんこうや保険ほけん、商社しょうしゃなどで新規しんきの石炭せきたん火力かりょく発電はつでん事業じぎょうの融資ゆうしや開発かいはつを行おこなわないことが発表はっぴょうされるなど、環境かんきょうに配慮はいりょする動うごきが広ひろがっています。

企業きぎょうの情報じょうほう開示かいじに詳くわしい大和やまと証券しょうけんESGリサーチ課かの大澤おおさわ秀一ひでかずさんは「これまで株主かぶぬしは、株主かぶぬし総会そうかいで経営けいえい者しゃへの報酬ほうしゅうについて意見いけんを言いってきたが、最近さいきんでは気候きこう変動へんどうに対にたいしてものを言いう時代じだいに変かわってきている。これからは金融きんゆうだけでなく、化石かせき燃料ねんりょうを多おおく使つかう鉄鋼てっこうやエネルギー、化学かがくなどの分野ぶんやでも企業きぎょうと投資とうし家かの対話たいわの中なかで気候きこう変動へんどうが大おおきな役割やくわりを持もっていくだろう」と話はなしています。

日本にっぽんの石炭せきたん火力かりょくは世界せかいで批判ひはんの対象たいしょうに

日本にっぽんの発電はつでん量りょう全体ぜんたいに占しめる石炭せきたん火力かりょく発電はつでんの割合わりあいは、福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこのあと原子力げんしりょくに代かわる形かたちで増加ぞうかし、2012年度ねんど以降いこうは30％以上いじょうの状況じょうきょうが続つづいています。

IEA＝国際こくさいエネルギー機関きかんのまとめによりますと、日本にっぽんは2019年度ねんど、石炭せきたん火力かりょく発電はつでんの割合わりあいがG7＝主要しゅよう7か国かこくの中なかで最もっとも高たかくなっています。

また、G7の中なかで国内こくないでの石炭せきたん火力かりょくによる発電はつでんをゼロにする目標もくひょうを掲かかげていないのは、日本にっぽんとアメリカだけです。

さらに日本にっぽんは効率こうりつの高たかい施設しせつにかぎっているものの、石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょの輸出ゆしゅつに公的こうてきな融資ゆうしを認みとめる方針ほうしんを示しめしていて、ヨーロッパを中心ちゅうしんに石炭せきたん火力かりょく発電はつでん所しょを段階だんかい的てきに廃止はいししていく動うごきが広ひろがる中なか、国際こくさい社会しゃかいでは
日本にっぽんに対にたいする批判ひはんの声こえも出でています。

ソース：NHK ニュース