【現地げんちは今いま】ロシア軍ぐんねらうウクライナの要衝ようしょうオデッサで何なにが？

ロシア軍ぐんが、海うみと陸りくの両方りょうほうから圧力あつりょくを強つよめるウクライナ南部なんぶ。目指めざす先さきの一ひとつに、ウクライナ最大さいだいの港湾こうわん都市としオデッサがあります。
近郊きんこうの都市としでは激はげしい戦闘せんとうで、すでに多数たすうの死傷ししょう者しゃが出でています。オデッサ中心ちゅうしん部ぶでも、市民しみんがロシア軍ぐんの侵攻しんこうに備そなえるなど、緊張きんちょうが高たかまっています。

現地げんちは今いま、どんな状況じょうきょうなのか。そこに住すんでいる人ひとたちは、どうしているのか。
詳くわしく解説かいせつします。

南部なんぶの要衝ようしょう“オデッサ”とは

オデッサは、ウクライナ南部なんぶにある黒海こっかいに面めんした港湾こうわん都市としです。
軍事ぐんじ侵攻しんこう前まえの人口じんこうは100万まん人にん余あまりと、首都しゅとキエフ、第だい2の都市とし、東部とうぶのハリコフに次ついで3番目ばんめ。

そこにあるオデッサ港こうは、ウクライナ最大さいだいの港みなとで、東部とうぶで製造せいぞうされた工業こうぎょう製品せいひんや、南部なんぶで生産せいさんされた小麦こむぎなどを輸出ゆしゅつする国際こくさい貿易ぼうえき港みなととして古ふるくから発展はってんしてきた「南部なんぶの要衝ようしょう」です。

ロシア軍ぐん、なぜねらう？その1

ロシア軍ぐんにとっても、黒海こっかい沿岸えんがん地域ちいきは、地政学ちせいがく的てきな要衝ようしょうだからです。

ロシアは、冬場ふゆばになると多おおくの港みなとが凍こおってしまうため、「凍こおらない港みなと＝不凍港ふとうこう」の獲得かくとくを目指めざしてきた歴史れきしがあります。
このため、温暖おんだんなクリミア半島くりみあはんとうなどの黒海こっかい沿岸えんがん地域ちいきを重要じゅうよう視ししてきました。

ロシア軍ぐん、なぜねらう？その2

ウクライナにとっても、オデッサは「沿岸えんがん防衛ぼうえいの要よう」だからです。
というのも、ウクライナ政府せいふは、2014年ねんにロシアがクリミアを一方いっぽう的てきに併合へいごうしたあと、クリミアにあったウクライナ海軍かいぐんの司令しれい部ぶの機能きのうを、オデッサに移うつしているためです。

以上いじょうのことから、ロシア軍ぐんは、次つぎのようなねらいで、オデッサの支配しはいを目指めざしているとみられます。
▽ウクライナを国際こくさい的てきな海うみの物流ぶつりゅう網もうから切り離きりはなす
▽ウクライナ海軍かいぐんの戦力せんりょくを使つかえなくする

実際じっさいに、アメリカ国防こくぼう総省そうしょうの高官こうかんも、ロシア軍ぐんがオデッサ制圧せいあつに向むけた作戦さくせんを準備じゅんびしている可能かのう性せいがあるという見方みかたを示しめしています。

オデッサ周辺しゅうへんのロシア軍ぐんの状況じょうきょうは？

アメリカ国防こくぼう総省そうしょうの高官こうかんが21日にち、記者きしゃ団だんに対にたいして明あきらかにしたロシア軍ぐんによるウクライナへの軍事ぐんじ侵攻しんこうの最新さいしん情報じょうほうは、次つぎのとおりです。
▽黒海こっかいでロシア海軍かいぐんの活動かつどうが活発かっぱつ化か
▽黒海こっかいの北側きたがわに展開てんかいする艦隊かんたいからオデッサ周辺しゅうへんに砲撃ほうげきが行おこなわれている
▽水陸すいりく両用りょうよう作戦さくせんが行おこなわれる兆候ちょうこうか分わからないが、10隻せき以上いじょうの艦艇かんていが確認かくにんできる

一方いっぽう、陸上りくじょうからのロシア軍ぐんによるオデッサ近郊きんこうでの攻勢こうせいも強つよまっています。
ロシア軍ぐんは、クリミア半島くりみあはんとうに隣接りんせつしたヘルソンを掌握しょうあくしたと発表はっぴょう。
また、オデッサから東ひがしに100キロ余あまり離はなれた都市としミコライフでは、軍ぐんの施設しせつがミサイル攻撃こうげきを受うけています。

オデッサ市民しみんは？

オデッサで暮くらす男性だんせいは、SNSのメッセージで今いまの状況じょうきょうについて、次つぎのように教おしえてくれました。

「沖合おきあいには、連日れんじつ、ロシア軍ぐんの艦艇かんていが見みえます。軍事ぐんじ侵攻しんこうが始はじまって以降いこう、気きが休やすまらず体調たいちょうがあまりすぐれません。体重たいじゅうは10キロ以上いじょう減へりました。
それでも、自分じぶんたちの街まちを守まもらなければならないので、ほかの市民しみんと一緒いっしょにロシア軍ぐんの攻撃こうげきに備そなえています」

市民しみんの暮くらしは？

オデッサに住すみ、そこを拠点きょてんに活動かつどうするジャーナリスト、マイケル・シュトケルさん（36）は、オンラインでの取材しゅざいに応おうじ、市民しみんの暮くらしや街まちの状況じょうきょうなどについて話はなしてくれました。

「今いまのところ市内しない中心ちゅうしん部ぶでは大おおきな被害ひがいは確認かくにんされていません。電気でんきや水みずといった生活せいかつインフラにも問題もんだいはありません。ただ、ガソリンが不足ふそくしていて、ロシア軍ぐんの侵攻しんこう前まえに比くらべると、価格かかくが3倍ばいに上あがっています。
また、多おおくの女性じょせいや子こどもたちが避難ひなんしたため、街まちなかは人通ひとどおりが少すくなく、飲食いんしょく店てんや娯楽ごらく施設しせつなどはほとんど営業えいぎょうしていません」

街まちの様子ようすは？

「市内しないの緊迫きんぱく感かんが日に日ひにひに高たかまっていると感かんじます。近郊きんこうの村むらでは戦闘せんとうが続つづいていますし、私わたしが住すむ市内しない中心ちゅうしん部ぶでも、連日れんじつ、銃声じゅうせいや爆発ばくはつ音おんが聞きこえます。多おおくの市民しみんは、領土りょうど防衛ぼうえい部隊ぶたいに入はいって警戒けいかいを強つよめています。
また、銃弾じゅうだんや砲撃ほうげきの被害ひがいを少すこしでも減へらそうと、街まちの中なかに土どのうを積つむ市民しみんの姿すがたも見みられます。侵攻しんこうに備そなえて、市民しみんたちみずから街がいを守まもろうとしています」

それでも残のこり続つづける理由りゆうは？

「侵攻しんこう前まえのオデッサは、多おおくの人ひとでにぎわい、笑顔えがおのあふれる、自慢じまんの街まちでした。ただ、今いまはすべてが変かわってしまいました。
それでも『今いま、何なにが起おきているのか』を伝つたえるのが私わたしの仕事しごとです。
ウクライナの人々ひとびとは今いまも抵抗ていこうを続つづけていて、ロシア軍ぐんの侵攻しんこうをはね返はねかえす力ちからがあることを伝つたえていきます」

ソース：NHK ニュース