「治療の最前線で闘っている」ウクライナにとどまる医師の思い
2022-04-15 08:53:30

国連の機関「UN Women」は、ロシアによる軍事侵攻が続く中でも現地に残り最前線で働くウクライナの女性たちの姿をSNSなどで伝えています。
そのうちの1人、医師のイリナ・ホンツァさん(49)はルーマニア国境近くにある都市、チェルニウツィの病院で、入院患者200人余りの治療にあたっています。
これまでに空爆は起きていないものの、一日に何度も空襲警報が鳴り響き、そのたびに患者をシェルターに避難させる状況が続いているといいます。
戦闘が激しい地域から、多くの患者ががん治療を求めて来ているということです。
イリナさんは「マリウポリから来た女性患者は寒さに耐え、おなかをすかせていて、精神的なトラウマはひどいものだった。キーウから来た若い女性は、長い間シェルターに隠れていて体重は35キロしかなく、1人で歩くこともできない状態だった。ハルキウから来た高齢女性は家が破壊されたショックで泣きやむことができず、ミサイルが近くで爆発し、一時的に聴力を失っていた。がん患者としてすでに大きな痛みと恐怖を抱えているにもかかわらず、爆撃や戦闘のせいでさらに心理的、精神的な負担を負っていた」と厳しい状況を伝えました。
イリナさんは、知人から国外に逃れるよう声をかけられたものの、現地にとどまる選択をしたということで、「この悲惨な状況の中で、いかにして患者を守り治療を続けるか。私たちの国で起こっている戦争とは別に、医師として治療の最前線で闘っている」と思いを話しました。
イリナさんは「誕生日や記念日に『平和な空がありますように』という言葉をおくりあうが、それがどれほど大切なことか、奪われてはじめてその価値に気付いた。ウクライナが経験していることは、ほかの誰にも経験してほしくない」と、一刻も早く平和が戻ってほしいと訴えていました。