【現地げんちは今いま】ロシア軍事ぐんじ侵攻しんこう2か月かげつ ウクライナ首都しゅとキーウは？

ロシア軍ぐんによるウクライナへの侵攻しんこうが始はじまって、4月つき24日にちで2か月かげつ。
首都しゅとキーウではこれまでに何なにが起おき、今いまはどんな状況じょうきょうなのか。
そして、住すんでいる人ひとたちは何なにを思おもうのか。
戦況せんきょうを振り返ふりかえるとともに、キーウに暮くらす住民じゅうみんに話はなしを聞ききました。

地下ちかに1か月かげつ以上いじょう避難ひなんしていた住民じゅうみんは

「家いえに戻もどることができてうれしいです」

こう話はなすのは、首都しゅとキーウの地下鉄ちかてつをシェルター代かわりに避難ひなんしていた日本語にほんご教師きょうしのアリョーナ・ブィチコフスカさん（33）です。

2か月かげつ前まえに侵攻しんこうが始はじまった日ひから、夫おっと、夫おっとの姉あね、飼かい猫ねことともに地下鉄ちかてつの構内こうないに避難ひなんしていましたが、2週間しゅうかんほど前まえに自宅じたくに戻もどることができたということです。

ブィチコフスカさんは、オンラインのインタビューで、現地げんちの今いまの状況じょうきょうを説明せつめいしてくれました。

以前いぜんは、多おおくて1日にち15回かいほど聞きこえたという爆音ばくおん。
最近さいきんだと4月つき15日にちに1度ど聞きこえたそうです。
こうした状況じょうきょうから、避難ひなんしていたキーウの住民じゅうみんたちが戻もどって来きていて、市場しじょう、コーヒーショップ、床屋とこやなどは営業えいぎょうを再開さいかいしているのだそうです。

週末しゅうまつに市場しじょうへ買い物かいものにいったというブィチコフスカさん。
店舗てんぽには、肉にく、パン、卵たまご、牛乳ぎゅうにゅうなどの商品しょうひんが並ならび、大勢たいせいの買い物かいもの客きゃくがいたといいます。
軍事ぐんじ侵攻しんこうの前まえは長ながい行列ぎょうれつができていた薬局やっきょくも、侵攻しんこう前まえの状態じょうたいに戻もどり、ほしい薬くすりはいつでも買かえるそうです。

「地下ちかから戻もどり、パジャマを着きて、柔やわらかいベッドで寝ねることができ、とても快適かいてきです。食事しょくじを食たべることができ、シャワーを浴あびることもできて、当たり前あたりまえの生活せいかつに戻もどっています。この前まえ、晴はれた日ひに公園こうえんへ行いき、おいしいパンとコーヒーを味あじわいながらリラックスしました」

一見いっけん、“日常にちじょう”を取り戻とりもどしているように見みえるブィチコフスカさんですが、今いまでも常つねに不安ふあんを感かんじているといいます。

「キーウの街まちは、以前いぜんよりは安全あんぜんになったと思おもいますが、もしかしたらミサイル攻撃こうげきがあるかもしれないと思おもっています。だから、不安ふあんな気持きもちはずっと感かんじています。何なにかあったらすぐにシェルター代かわりの地下鉄ちかてつに戻もどれるように、避難ひなんしていた場所ばしょには毛布もうふなどを残のこしています」

キーウでは、何なにが起おきていたのか？

現在げんざいは、ロシア軍ぐんによる攻撃こうげきが比較的ひかくてき減へりつつあるとみられる首都しゅとキーウ。
しかし、ロシア軍ぐんは、侵攻しんこう開始かいし直後ちょくごからキーウへの攻勢こうせいを強つよめ、2週間しゅうかん後ごには、キーウ中心ちゅうしん部ぶから約やく15キロの距離きょりにまで迫せまっていました。

しかし、キーウ近郊きんこうでは、ウクライナ軍ぐんも反撃はんげきを続つづけます。

「キーウ防衛ぼうえいの要よう」とされたイルピン。
キーウの北西ほくせいに隣接りんせつするその地域ちいきで、北きたから接近せっきんしたロシア軍ぐんの地上ちじょう部隊ぶたいとウクライナ軍ぐんの守備しゅび隊たいの間まで、激はげしい戦闘せんとうが行おこなわれました。

そのイルピンのマルクシン市長しちょうは、3月つき28日にちに、SNSで動画どうがを公開こうかい。
次つぎのように報告ほうこくしました。

「きょうはよい知しらせがある。イルピンが解放かいほうされた。掃討そうとう作戦さくせんを継続けいぞく中ちゅうだ」

キーウを奪還だっかん

翌日よくじつ29日にちに行おこなわれたロシアとウクライナの停戦ていせん交渉こうしょう。
ロシア側がわは、キーウ周辺しゅうへんと北部ほくぶチェルニヒウの軍事ぐんじ作戦さくせんを大幅おおはばに縮小しゅくしょうし、重点じゅうてんを東部とうぶに移うつす方針ほうしんを示しめしました。

戦況せんきょうを分析ぶんせきしているイギリス国防省こくぼうしょうは、ウクライナ軍ぐんによるたび重かさなる反撃はんげきで「キーウを包囲ほういする目的もくてきだったロシア軍ぐんの攻勢こうせいが失敗しっぱいしたのはほぼ確実かくじつだ」と指摘してきします。

そして4月つき2日にち、ウクライナのマリャル国防こくぼう次官じかんは、自身じしんのフェイスブックに「キーウ州しゅう全域ぜんいきが侵略しんりゃく者しゃから解放かいほうされた」と投稿とうこう。

キーウのほか、イルピン、ブチャなどを含ふくむキーウ州しゅう全域ぜんいきをロシア軍ぐんから奪還だっかんしたことを明あきらかにしました。

見みつかったたくさんの遺体いたい

※ロシア軍ぐんの撤退てったい後ご、多数たすうの遺体いたいが見みつかったウクライナの首都しゅとキーウ近郊きんこうのブチャの状況じょうきょうについて一部いちぶ、画像がぞうを加工かこうしたうえで掲載けいさいしています。

「犠牲ぎせい者しゃの遺体いたいは、まだ路上ろじょうに残のこされている。手てを縛しばられ、頭あたまを撃うたれた人ひともいる。この地域ちいきで、いかに違法いほうなことが行おこなわれていたのか想像そうぞうできる」
（4月つき2日にち、ブチャの市長しちょう、ロイター通信ろいた-つうしんの取材しゅざいに対にたいし）

ロシア軍ぐんが撤退てったいしたあと、キーウ近郊きんこうなどで多数たすうの市民しみんの遺体いたいが見みつかり、現地げんちの深刻しんこくな状況じょうきょうが明あきらかになります。
特とくに、キーウの北西ほくせいにあるブチャでは、多おおくの市民しみんが路上ろじょうで死亡しぼうしているのが見みつかりました。

この画像がぞうは、アメリカのABCテレビが4月つき4日にちに放送ほうそうした映像えいぞうです。
ブチャに入はいった取材しゅざい班はんが撮影さつえいしたものだとしています。

ロシア軍ぐんが数すう週間しゅうかんにわたって占拠せんきょしていたという建物たてものの地下ちか室しつでは5人にんの遺体いたいが見みつかりました。
ひざをついた状態じょうたいで倒たおれたとみられる遺体いたいもあり、ABCテレビは地元じもとの人ひとの話はなしとして、この地下ちか室しつでは拷問ごうもんが行おこなわれていたと伝つたえました。

ブチャを訪おとずれたクリチコ市長しちょうも、4月つき5日にちにNHKのインタビューに応おうじ、次つぎのように話はなしました。

「これはウクライナの国民こくみんに対にたいするジェノサイドだ。ロシア軍ぐんは、女性じょせいや子こどもを殺ころした。『子こども』と大おおきな文字もじで書かかれ、白旗はっきを掲かかげた多おおくの車くるまが路上ろじょうにあった。避難ひなんしようとした人ひとたちを、ロシア軍ぐんは銃撃じゅうげきしたのだ」

キーウ州しゅうの警察けいさつ当局とうきょくは15日にちの記者きしゃ会見かいけんで、ロシア軍ぐんの撤退てったい以降いこう、州しゅう内ないで900人にん以上いじょうの民間みんかん人じんの遺体いたいが見みつかり、そのうちブチャでは350人にん以上いじょうの遺体いたいが見みつかったことを明あきらかにしています。

ロシアは“ねつ造ねつぞう”だと主張しゅちょう

一方いっぽうのロシア側がわ。

ロシアのラブロフ外相がいしょうは、4月つき4日にちの記者きしゃ会見かいけんで「ロシア軍ぐんが3月つき30日にちにブチャを離はなれたあと地元じもとの市長しちょうが3日間にちかんテレビに出演しゅつえんしていたが、その際さいに写うつされた路上ろじょうには遺体いたいはなかった」と述のべ、ウクライナ側がわがうその情報じょうほうを流ながしていると主張しゅちょうしました。

さらに、大統領だいとうりょう府ふのペスコフ報道ほうどう官かんはフランスのテレビ局てれびきょくで4月つき6日にちに放送ほうそうされたインタビューの中なかで、次つぎのように主張しゅちょうしました。

「組織そしき的てきにねつ造ねつぞうされたものだ」

また、ロシア国営こくえいテレビの「第だい1チャンネル」は遺体いたいが写うつった現地げんちの映像えいぞうに対にたいして「よく見みると、これは新あらたな“フェイク”、芝居しばいであることがわかる」と放送ほうそう。（4月つき3日にち）

国営こくえいの「ロシア通信つうしん」も、ウクライナ警察けいさつの情報じょうほうとして、遺体いたいは、ウクライナ側がわの攻撃こうげきによって死亡しぼうした人ひとたちだと主張しゅちょうしました。

「ウクライナの特殊とくしゅ部隊ぶたいは、ロシアの工作こうさく員いんやロシア軍ぐんに協力きょうりょくしていた人ひとたちの掃討そうとうを行おこなった。投稿とうこうされた動画どうがに写うつっている数すう体たいの遺体いたいの腕うでに白しろい布ぬのが結むすばれているが、これがロシア人じんを示しめす印しるしだということだ」（4月つき3日にち）

「21世紀せいきの重大じゅうだいな戦争せんそう犯罪はんざい者しゃ」

「プーチンは、21世紀せいきの重大じゅうだいな戦争せんそう犯罪はんざい者しゃだ。ウクライナの法令ほうれいでは、大統領だいとうりょう、外相がいしょう、首相しゅしょうを訴追そついできないが、国際こくさい法廷ほうていなら可能かのうだ」

こう語気ごきを強つよめたのは、ウクライナのベネディクトワ検事けんじ総長そうちょうです。

検事けんじ総長そうちょうは、その後そのご、ウクライナ国内こくないで起おきたロシアによる戦争せんそう犯罪はんざいは5600件けんに上のぼり、ロシア軍ぐんの幹部かんぶや政治せいじ家かなど、約やく500人にんの容疑ようぎ者しゃを特定とくていしたとしました。

国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょのカーン主任しゅにん検察官けんさつかんは、4月つき13日にちにブチャを訪おとずれ、戦争せんそう犯罪はんざいなどの本格ほんかく的てきな捜査そうさに乗り出のりだす姿勢しせいを示しめしました。

「私わたしがここを訪おとずれたのは、国際こくさい刑事けいじ裁判所さいばんしょが管轄かんかつする犯罪はんざいが行おこなわれたと信しんじるに足たる合理ごうり的てきな根拠こんきょがあるからだ」

こう述のべたカーン主任しゅにん検察官けんさつかんは、ウクライナの検事けんじ総長そうちょうとも会談かいだんし、捜査そうさに向むけて協力きょうりょくしていくことで合意ごういしたほか、法医学ほういがくの専門せんもん家かなどからなるチームを現地げんちで捜査そうさにあたらせることを明あきらかにしました。

各国かっこく首脳しゅのうがキーウへ、連帯れんたいを強調きょうちょう

ロシア軍ぐんの首都しゅと周辺しゅうへんからの撤退てったいを受うけて、各国かっこく首脳しゅのうらによるキーウ訪問ほうもんも相次あいついでいます。

4月つき9日にち、イギリスのジョンソン首相しゅしょうがキーウを訪問ほうもんし、ゼレンスキー大統領だいとうりょうと会談かいだん。
キーウ市内しないも視察しさつし、市民しみんに「ウクライナの人々ひとびとを全力ぜんりょくで支援しえんしたい」などと声こえをかけました。

このほかにも、EU＝ヨーロッパ連合れんごうのフォンデアライエン委員いいん長ちょうとボレル上級じょうきゅう代表だいひょう、隣国りんごくポーランドとバルト3国こくの大統領だいとうりょうらもキーウを訪おとずれました。
このうち、エストニアのカリス大統領だいとうりょうは次つぎのように述のべて、ウクライナとの連帯れんたいを強調きょうちょうしました。

「私わたしたちの今回こんかいの訪問ほうもんは、ヨーロッパや民主みんしゅ主義しゅぎのために戦たたかっているウクライナとの緊密きんみつな関係かんけいや絶対ぜったい的てきな連帯れんたいを示しめすものだ」

キーウに戻もどる住民じゅうみん、しかし…

こうした中なか、キーウの住民じゅうみんの中なかにも、避難ひなん先さきから戻もどる動うごきが目立めだち始はじめています。

しかし、ロシア国防省こくぼうしょうやロシア軍ぐんは、立て続たてつづけに次つぎのように発表はっぴょう。

15日にち キーウ近郊きんこうのミサイル製造せいぞう施設しせつを攻撃こうげき
16日にち キーウにある戦車せんしゃなどを製造せいぞうする工場こうじょうをミサイルで破壊はかい
18日にち キーウ近郊きんこうで、大型おおがた弾薬だんやく庫こを破壊はかい

実際じっさい、キーウのクリチコ市長しちょうも16日にち、郊外こうがいで爆発ばくはつがあり、1人にんが死亡しぼう、複数ふくすうのけが人けがにんが出でていることを明あきらかにしました。

そのうえで、避難ひなん先さきにいる市民しみんには首都しゅとに戻もどらず、安全あんぜんな場所ばしょにとどまるよう呼よびかけました。

ロシアによるウクライナ侵攻しんこうが始はじまってから２にか月かげつ余あまり。首都しゅとキーウの緊迫きんぱくした状況じょうきょうは今いまも続つづいています。

ソース：NHK ニュース