大川おおかわ小学校しょうがっこうの津波つなみ訴訟そしょう 争点そうてんと判決はんけつの詳細しょうさい

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの津波つなみで犠牲ぎせいになった宮城みやぎ県けん石巻いしのまき市しの大川おおかわ小学校しょうがっこうの児童じどうの遺族いぞくが訴うったえた裁判さいばんで、仙台せんだい地方ちほう裁判所さいばんしょは石巻いしのまき市しなどに対にたいし１いち４よん億おく円えん余あまりの賠償ばいしょうを支払しはらうよう命めいじました。今回こんかいの裁判さいばんでは、海岸かいがんからおよそ４よんキロ離はなれた小学校しょうがっこうまで津波つなみが到達とうたつすることを学校がっこう側がわが予測よそくできたかどうかが大おおきな争点そうてんになりました。

最大さいだいの争点そうてんとなった学校がっこうまで津波つなみが来くることを学校がっこう側がわが予測よそくできたかどうかについて、判決はんけつでは「遅おそくとも津波つなみが来くるおよそ７なな分ふん前まえの午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふんごろまでには、石巻いしのまき市しの広報こうほう車しゃが津波つなみが沿岸えんがんの松林まつばやしを越こえてきていることを告つげながら、高台たかだいへの避難ひなんを呼よびかけていた。教員きょういんらはこれを聞きいた段階だんかいでほどなく津波つなみが小しょう学校がっこうに来くることを予見よけんできた。地震じしんがそれまでに経験けいけんしたことのない規模きぼであったことや、ラジオで伝つたえられた予想よそうされる津波つなみの高たかさが６ろくメートルから１いち０ぜろメートルという大おおきなものであったこと、北上ほくじょう川がわの河口かこうの地区ちくから大川おおかわ小学校しょうがっこうにかけて津波つなみの進行しんこうを妨さまたげるような障害しょうがい物ぶつもなく、小学校しょうがっこうの標高ひょうこうも１いちメートルから１いちメートル５ご０ぜろセンチしかなかったことなどからすると、教員きょういんらはそのまま校庭こうていにとどまっていた場合ばあい、児童じどうの生命せいめい身体しんたいに危険きけんが生しょうじることを認識にんしきできた。教員きょういんらは可能かのうな限かぎり津波つなみによる被災ひさいを回避かいひできる場所ばしょに児童じどうを避難ひなんさせる注意ちゅうい義務ぎむがあった」と指摘してきしました。

予測よそく可能かのう性せいと注意ちゅうい義務ぎむ

最大さいだいの争点そうてんとなった学校がっこうまで津波つなみが来くることを学校がっこう側がわが予測よそくできたかどうかについて、判決はんけつでは「遅おそくとも津波つなみが来くるおよそ７なな分ふん前まえの午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふんごろまでには、石巻いしのまき市しの広報こうほう車しゃが津波つなみが沿岸えんがんの松林まつばやしを越こえてきていることを告つげながら、高台たかだいへの避難ひなんを呼よびかけていた。教員きょういんらはこれを聞きいた段階だんかいでほどなく津波つなみが小しょう学校がっこうに来くることを予見よけんできた。地震じしんがそれまでに経験けいけんしたことのない規模きぼであったことや、ラジオで伝つたえられた予想よそうされる津波つなみの高たかさが６ろくメートルから１いち０ぜろメートルという大おおきなものであったこと、北上ほくじょう川がわの河口かこうの地区ちくから大川おおかわ小学校しょうがっこうにかけて津波つなみの進行しんこうを妨さまたげるような障害しょうがい物ぶつもなく、小学校しょうがっこうの標高ひょうこうも１いちメートルから１いちメートル５ご０ぜろセンチしかなかったことなどからすると、教員きょういんらはそのまま校庭こうていにとどまっていた場合ばあい、児童じどうの生命せいめい身体しんたいに危険きけんが生しょうじることを認識にんしきできた。教員きょういんらは可能かのうな限かぎり津波つなみによる被災ひさいを回避かいひできる場所ばしょに児童じどうを避難ひなんさせる注意ちゅうい義務ぎむがあった」と指摘してきしました。

約やく５ご０ぜろ分ふんとどめた対応たいおう

裁判さいばんでは、児童じどうを校庭こうていにおよそ５ご０ぜろ分間ふんかんとどめた学校がっこう側がわの対応たいおうも争点そうてんとなりました。これについて、判決はんけつでは、午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふんごろまでには津波つなみの到達とうたつを予測よそくできたとして、その前後ぜんごに分わけてそれぞれ判断はんだんを示しめしています。
午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふんよりも前まえの段階だんかいについては、「地震じしんの揺ゆれが収おさまったあとも児童じどうの下校げこうを見合みあわせたのは、安全あんぜんが十分じゅうぶん確保かくほされていないとの判断はんだんに基もとづいた必要ひつような措置そちと言いえる。裏山うらやまには土砂どしゃ災害さいがいの危険きけんがあったため教員きょういんらが早期そうきに避難ひなんしなかったのはやむをえない」としています。
一方いっぽうで、午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふん以降いこうについては「市しの広報こうほう車しゃが高台たかだいへ避難ひなんするよう呼よびかけているのを聞きいた段階だんかいでは、可能かのうな限かぎり津波つなみを回避かいひできる場所ばしょに児童じどうを避難ひなんさせる注意ちゅうい義務ぎむがあった」と指摘してきしました。

裏山うらやまへの避難ひなん

裁判所さいばんしょは、裏山うらやまへ避難ひなんすべきだったという遺族いぞく側がわの主張しゅちょうを認みとめ、学校がっこう側がわの対応たいおうに問題もんだいがあったと厳きびしく指摘してきしています。
判決はんけつでは「教員きょういんらが目指めざした近隣きんりんの交差点こうさてん付近ふきんは大だい規模きぼな津波つなみが来くることを予測よそくしていた中なかでの避難ひなん場所ばしょとしては不ふ適当てきとうだ。学校がっこうの裏山うらやまに避難ひなんする場合ばあい、津波つなみから逃のがれるのに十分じゅうぶんな高たかさである標高ひょうこう１いち０ぜろメートル付近ふきんに達たっするまで、百ひゃく数すう十じゅうメートル移動いどうする必要ひつようはあったが、原告げんこくの遺族いぞくらによる実験じっけんの結果けっかでは、歩あるいても２に分ふん、小走こばしりだと１いち分ふん程度ていどで足たりていたことから、多少たしょうの混乱こんらんがあっても避難ひなんを最さい優先ゆうせんにしていれば、津波つなみで被災ひさいすることを免まぬかれることができた。過去かこに椎茸しいたけ栽培さいばいの学習がくしゅうなどで児童じどうも登のぼっていた場所ばしょであり、避難ひなん場所ばしょとして具体ぐたい的てきな支障ししょうのない学校がっこうの裏山うらやまに避難ひなんさせるべきだった。避難ひなん場所ばしょとしては不ふ適当てきとうな交差点こうさてん付近ふきんに向むけて移動いどうしようとした結果けっか、児童じどうらが死亡しぼうした」として、教員きょういんらは、児童じどうが死亡しぼうしたことについて過失かしつがあると認みとめました。

危機きき管理かんりマニュアル

震災しんさい前まえに小学校しょうがっこうが作つくった危機きき管理かんりマニュアルに津波つなみへの対応たいおうが十分じゅうぶんに盛り込もりこまれていなかったことについて、判決はんけつは「大川おおかわ小学校しょうがっこうがある地域ちいきには、過去かこには明治めいじ２に９きゅう年ねんの地震じしんで１いち人にんの死者ししゃが出でた以外いがいには人命じんめい被害ひがいが出でた記録きろくはなく、沿岸えんがん部ぶに襲来しゅうらいした津波つなみの規模きぼも、昭和しょうわ８はち年ねんの地震じしんの際さいに高たかさ３さんメートル程度ていどの津波つなみが襲来しゅうらいしたのが、明あきらかになっている範囲はんいでは最大さいだいだった。宮城みやぎ県けんの津波つなみ浸水しんすい予測よそくでも、海岸かいがんからおよそ４よんキロ離はなれた大川おおかわ小学校しょうがっこうには及およばないとされ、これを基もとにした石巻いしのまき市し地域ちいき防災ぼうさい計画けいかくでも、津波つなみの避難ひなん場所ばしょに指定していされていた」と指摘してきしました。
そのうえで、「地震じしん発生はっせい前まえの段階だんかいで、津波つなみで児童じどうが被災ひさいする危険きけんが迫せまっていることを具体ぐたい的てきに予測よそくできるとはいえず、危機きき管理かんりマニュアルを津波つなみが発生はっせいした時ときの具体ぐたい的てきな避難ひなん場所ばしょや方法ほうほう、手順てじゅんを明記めいきした内容ないように改あらためるべき注意ちゅうい義務ぎむがあったとはいえない」と判断はんだんしました。

指定してい避難ひなん場所ばしょ

震災しんさいの発生はっせい当時とうじ、大川おおかわ小学校しょうがっこうは地震じしんと津波つなみの避難ひなん場所ばしょに指定していされていたことから、津波つなみの到達とうたつを予測よそくできなかったと被告ひこく側がわが主張しゅちょうしていました。
これについて、判決はんけつでは「午後ごご３さん時じ３さん０ぜろ分ふんごろまでに教員きょういんが得えた津波つなみについての情報じょうほうは決けっして限かぎられたものではない。津波つなみが沿岸えんがんの松林まつばやしを抜ぬけてきたことを市しの広報こうほう車しゃから聞きいて認識にんしきした以上いじょう、大川おおかわ小学校しょうがっこうが避難ひなん場所ばしょに指定していされているとしても、小学校しょうがっこうまで津波つなみが来くると予測よそくできたし、また予測よそくすべきだった」として被告ひこく側がわの主張しゅちょうを退しりぞけました。

ソース：NHK ニュース