年金ねんきん資金しきん消失しょうしつ事件じけん 回収かいしゅうは１いち０ぜろ０ぜろ億おく円えん程度ていどにとどまる

東京とうきょうの投資とうし運用うんよう会社かいしゃ「ＡＩＪ投資とうし顧問こもん」が巨額きょがくの年金ねんきん資金しきんを消失しょうしつさせた事件じけんで、４よん年ねんにわたって続つづけられてきた資金しきんの回収かいしゅう作業さぎょうが終おわり、全国ぜんこくの年金ねんきん基金ききんなどがＡＩＪに預あづけていたおよそ１いち４よん５ご０ぜろ億おく円えんのうち、回収かいしゅうできたのは１いち０ぜろ０ぜろ億おく円えん程度ていどにとどまったことが関係かんけい者しゃへの取材しゅざいでわかりました。

東京とうきょう・中央ちゅうおう区くにあった「ＡＩＪ投資とうし顧問こもん」は、全国ぜんこくの年金ねんきん基金ききんなどからおよそ１いち４よん５ご０ぜろ億おく円えんの年金ねんきん資金しきんを集あつめましたが、４よん年ねん前まえ、運用うんようの失敗しっぱいで巨額きょがくの損失そんしつを出だしていたことが明あきらかになりました。

ＡＩＪの浅川あさがわ和彦かずひこ元もと社長しゃちょうは詐欺さぎなどの罪つみで懲役ちょうえき１いち５ご年ねんの刑けいが確定かくていし、ことし７月しちがつ、刑務所けいむしょに収監しゅうかんされました。

被害ひがいを受うけた年金ねんきん基金ききんなどは、法律ほうりつ事務所じむしょに委任いにんして資金しきんの回収かいしゅうを続つづけてきましたが、関係かんけい者しゃによりますと、今月こんげつ１いち８はち日にちまでに作業さぎょうが終了しゅうりょうし、回収かいしゅうできたのは預あづけた資金しきんの７なな％のおよそ１いち０ぜろ０ぜろ億おく円えんにとどまったということです。
４よん年ねん前まえに証券しょうけん取引とりひき等とう監視かんし委員いいん会かいが公表こうひょうした検査けんさ結果けっかでは、最大さいだいで２に５ご０ぜろ億おく円えん程度ていどの資産しさんが残のこされている可能かのう性せいが示しめされていました。

回収かいしゅうできた資金しきんの内訳うちわけは、銀行ぎんこう口座こうざにあった現げん預金よきんが８はち１いち億おく円えん、ＡＩＪが受け取うけとっていたリベートの９きゅう億おく円えんなどとなっています。

被害ひがい回復かいふくに向むけて今後こんごは、浅川あさがわ元もと社長しゃちょうの個人こじん資産しさんが残のこされていないか、破産はさん管財かんざい人じんの弁護士べんごしが調査ちょうさを続つづけることにしています。

国くにからも資金しきんを借かりて運用うんよう

多おおくのサラリーマンが受け取うけとる年金ねんきんは１いち階かい部分ぶぶんの国民こくみん年金ねんきん、２に階かい部分ぶぶんの厚生こうせい年金ねんきん、それに３さん階かい部分ぶぶんの企業きぎょう年金ねんきんのいわゆる３さん階かい建だてになっています。

ＡＩＪ事件じけんで被害ひがいを受うけた年金ねんきん基金ききんの多おおくは、中小ちゅうしょう企業きぎょうが集あつまってつくられていますが、３さん階かい部分ぶぶんの企業きぎょう年金ねんきんは加入かにゅうしている企業きぎょうの拠出きょしゅつ金きんだけでは運用うんよう効果こうかが小ちいさいため、２に階かい部分ぶぶんの厚生こうせい年金ねんきんの資金しきんを国くにから借かりてＡＩＪに運用うんようを任まかせていました。

ところが、ＡＩＪの運用うんよう失敗しっぱいで３さん階かい部分ぶぶんの原資げんしがなくなっただけでなく、国くにから借かりていた２に階かい部分ぶぶんの資金しきんまでも失うしなわれる事態じたいになりました。
これはサラリーマンの公的こうてき年金ねんきん資金しきんが損そこなわれたことを意味いみし、年金ねんきん基金ききんに加入かにゅうしていた中小ちゅうしょう企業きぎょうは今後こんご、その穴埋あなうめに必要ひつような額がくを分担ぶんたんして国くにに返済へんさいしなければなりません。

ＡＩＪから回収かいしゅうできる資金しきんがわずかにとどまることが判明はんめいしたことで、事件じけんで被害ひがいを受うけた中小ちゅうしょう企業きぎょうはこの費用ひよう負担ふたんが重おもくのしかかり、今後こんご、経営けいえいや雇用こようへの悪あく影響えいきょうが懸念けねんされます。

損失そんしつ穴埋あなうめで加入かにゅう企業きぎょうへの影響えいきょうも

ＡＩＪから回収かいしゅうできる資金しきんがわずかにとどまることがわかったことで、事件じけんの被害ひがいを受うけた年金ねんきん基金ききんに加入かにゅうする企業きぎょうへの影響えいきょうが懸念けねんされています。

去年きょねん１１月じゅういちがつに解散かいさんしたホテルにシーツなどを提供ていきょうする企業きぎょうでつくる年金ねんきん基金ききんでは、ＡＩＪに４よん５ご億おく円えんを預あづけ運用うんようを任まかせていましたが、これまでに戻もどってきたのは３さん億おく７なな０ぜろ０ぜろ０ぜろ万まん円えんにすぎません。
この年金ねんきん基金ききんでは、国くにから借かりた資金しきんにも１いち７なな億おく円えんの損失そんしつが出でていて、加入かにゅうしていた企業きぎょう４よん４よん社しゃで分担ぶんたんして穴埋あなうめせざるをえない状況じょうきょうになっています。

事件じけんのあと年金ねんきん基金ききんの事務じむ局長きょくちょうになった斉藤さいとう芳久よしひささんは「わずかな金額きんがくしか戻もどって来こないのは当初とうしょから予想よそうされていたが、もっと探さがせなかったのかという思おもいもあります。事件じけんの影響えいきょうで経営けいえい難なんに陥おちいったり、雇用こように影響えいきょうが出でている企業きぎょうもあります」と話はなしています。

神奈川かながわ県けんの印刷いんさつ会社かいしゃでつくる年金ねんきん基金ききんも同おなじように国くにから借かりた資金しきんに巨額きょがくな損失そんしつを出だし、ことし３月さんがつに解散かいさんしました。
従業じゅうぎょう員いんがおよそ３さん０ぜろ人にんの横浜よこはま市しの印刷いんさつ会社かいしゃ「カレンズ」は、この年金ねんきん基金ききんに加入かにゅうしていましたが、国くにに返済へんさいするためにおよそ５ご０ぜろ０ぜろ０ぜろ万まん円えんの負担ふたんを求もとめられていて、来年らいねんから１いち３さん年ねんかけて支払しはらっていかなければならないということです。

カレンズの木村きむら仁ひとし社長しゃちょうは「非常ひじょうに大おおきい金額きんがくです。会社かいしゃの経営けいえいからいえば、とても苦くるしい状況じょうきょうになる。こういう事態じたいに陥おちいり、腹立はらだたしいです。これからまた１いち３さん年間ねんかん苦くるしむことになります」と話はなしています。

この会社かいしゃの退職たいしょく者しゃの中なかには、受給じゅきゅうしていた年金ねんきんが月額げつがくで６ろく万まん円えん以上いじょう引き下ひきさげられた６ろく５ご歳さいの男性だんせいもいます。男性だんせいは定年ていねん後ごのいまも嘱託しょくたく社員しゃいんとして働はたらいているということで、「もらえるものがもらえなくなった、損そんをしたという思おもいは大おおきいです。定年ていねんになったら旅行りょこうに行いくことを楽たのしみにしていたが、働はたらかざるをえなくなりました」と話はなしています。

ソース：NHK ニュース