日銀 金融政策決定会合 マイナス金利政策解除に向け詰めの議論
2024-03-18 19:00:53

植田総裁ら9人の政策委員は、18日の会合で金融や経済の最新情勢について賃金や物価の動向を中心に意見を交わしたのに続き、19日は2日目の会合を行い、当面の政策運営の方針を決定します。
政策委員の一部からは、中小企業を含めた賃上げの動きがどこまで広がっているのか時間をかけて見極める必要があるという慎重な意見もあがっていますが、多くの委員が、賃金と物価がともに上昇する好循環の実現が見通せる状況になったとの見方を強めています。
19日の会合では、賃金の上昇を伴う形での2%の物価安定目標の実現が持続的に見通せるかを確認した上で、金融緩和策の柱となってきたマイナス金利政策の解除に向けて詰めの議論を行います。
あわせて、短期金利に加えて長期金利を抑え込む、イールドカーブ・コントロールと呼ばれる枠組みを終了することも検討します。
マイナス金利政策を解除して金利を引き上げれば、17年ぶりで、世界的にも異例な対応が続いてきた日本の金融政策は、正常化に向けて大きく転換することになります。
ただ、マイナス金利政策を解除しても、追加の利上げは急がず、当面は緩和的な環境を続ける方針です。
日銀は、19日昼ごろ、会合で決定した内容を公表し、午後、植田総裁が記者会見を開いて説明することにしています。
金融緩和策の転換 暮らしや企業活動への影響は
日銀がマイナス金利の解除など、金融緩和策を転換した場合、暮らしや企業活動にどのような影響があるのか、金融アナリストの大槻奈那さんに聞きました。
大槻さんは影響が出る分野として、
▽住宅ローン、
▽預金金利、
▽円相場、
▽企業の資金調達の、
4つを指摘しています。
住宅ローン
住宅ローンのうち、短期金利の影響を受けやすく、利用者の7割以上が選択しているとされる、変動型については、「日銀が政策金利を引き上げても、すぐには大手の金融機関などが住宅ローンの変動型の金利を上げるには至らないと思う。政策金利が0%からもっと上がる段階になると、変動型の金利も上がるのではないか」と話しています。
一方、長期金利の影響を受けやすい固定型については、「日銀がマイナス金利の解除とともにイールドカーブ・コントロールと呼ばれる枠組みに手を加えた場合、長期金利が上昇するかもしれない。そうなると、これから固定型を借りようとする人の金利は上がるのではないか」と話しています。
その上で「自身の住宅ローンが何に連動するのか、特に変動型の金利で借りている方々は、契約書をもう一度見てみて、どういう場合に金利が上がるのかを確認してほしい」と話しています。
預金金利
預金金利については、「かつて銀行は、金利が上下する局面で少し状況を見ながら時間差を置いて対応を決めることが一般的だったが、今回は、もしかしたら比較的早く動くかもしれない」と話しています。
その上で「人口動態の変化で、特に地方の金融機関では預金が減っているところもある。政策金利が変化した場合には、比較的早い段階で政策金利に近い水準まで預金金利を上げる金融機関があっても不思議ではない」と指摘しました。
円相場
大槻さんは、外国為替市場で見込まれる動きとして、「為替レートは相手国と自国との金利差で動くことが多いため、もし日本の金利がさらに上がっていくと市場が思えば、円を買う動きが強くなり、円高に振れる可能性がある。円高が進めば輸入品の物価が下がりやすくなるが、保有する外貨建ての資産が目減りすることも考えられる」と話しています。
企業の資金調達
企業の資金調達については、「企業の借入金利は政策金利に敏感に連動するため、仮に政策金利が0.1%上昇すれば、借入金利も変動型で借りている企業は金利が0.1%かそれ以上に上がる可能性がある」と話しています。
また、長期金利が上昇した場合には固定型の借入金利も上昇する可能性があると見ています。
その上で、大槻さんは「借入金利が上がると、企業の投資活動に対しマイナスの影響が出るおそれがあるが、業態を転換することやイノベーションを起こすことで利益率を高めていこうという動機も出てくる。金利がマイナスという異常な状態から正常化していくということは、企業のあり方も変わっていく第一歩なのではないかと思う」と話していました。