勝手かってにLINEグループ追加ついか “投資とうし”勧誘かんゆうトラブル急増きゅうぞう なぜ？

「あれっ、LINEのグループに勝手かってに追加ついかされてる」
「グループ名めいは『投資とうし交流こうりゅう会かい』、参加さんか者しゃは100人にんもいるのか」
「なになに、『2000万まん円えんもうかった』!?」

…ちょっと待まってください。これ詐欺さぎかもしれません。

いま急増きゅうぞうしているSNSでの“投資とうし”名目めいもくのトラブル。具体ぐたい的てきな手口てぐちと被害ひがいを防ふせぐための対策たいさくを取材しゅざいしました。

（デジタルでだまされない取材しゅざい班はん／社会しゃかい部ぶ 倉岡くらおか洋平ようへい・田畑たばた佑たすく典てん、徳島とくしま局きょく 永橋ながはしあずさ）

いつの間いつのまに!?「金融きんゆう投資とうし交流こうりゅう会かい」に追加ついか

5月つきから6月つきにかけて現金げんきん合あわせて2100万まん円えんを振り込ふりこんでしまったという都内とないに住すむ60代だいの男性だんせいが取材しゅざいに応おうじました。

男性だんせいはことし3月つき、「金融きんゆう投資とうし交流こうりゅう会かい」と称しょうするLINEのグループに勝手かってに追加ついかされました。このグループには100人にん余あまりが参加さんかしていましたが、心当こころあたりはなかったため、当初とうしょ、メッセージのやりとりは無視むししていたということです。

女性じょせいの名前なまえで個別こべつメッセージ 話題わだいはやがて“投資とうし”の話はなしに

しかし、4月つきになって、グループに所属しょぞくする女性じょせいとみられる名前なまえのアカウントから個別こべつにメッセージが届とどくと、ペットや料理りょうりの話題わだいについてやりとりするように。

すると、次第しだいに「外国がいこくの通貨つうかを売買ばいばいするFX取引とりひきを始はじめて多額たがくの利益りえきが出でた」とか「取引とりひきの基本きほんは丁寧ていねいに教おしえてもらえる」など投資とうしに関にかんするメッセージも届とどくようになり、関心かんしんを持もつようになったということです。

さらに、LINEグループ内ないのメッセージでも「2000万まん円えんもうかった」とか「利益りえきが出でたお金おかねで高級こうきゅう車しゃやクルーザーを購入こうにゅうした」といった投資とうしをあおるような書き込かきこみがあり、男性だんせいは「参加さんかしないと損そんかもしれない」と考かんがえるようになったといいます。

このときの心境しんきょうについて、男性だんせいは「もしかしたら本当ほんとうに“うまい話はなし”なのかなと思おもってしまった。劇場げきじょう型がたというのか、極きわめて巧妙こうみょうだと思おもいました」と振り返ふりかえりました。

「師匠ししょう」や「先生せんせい」の指示しじで2100万まん円えん振り込ふりこみ

グループではFX取引とりひきを勧すすめていて、専用せんようのソフトをスマートフォンにダウンロードしたうえで、「師匠ししょう」や「先生せんせい」と呼よばれる2人にんから売買ばいばいする外国がいこく通貨つうかやタイミングが伝つたえられ、指定していの口座こうざに現金げんきんを振り込ふりこむよう指示しじされました。

男性だんせいは3回かいにわたって合あわせて2100万まん円えんを振り込ふりこみましたが、ソフトの画面がめん上じょうで毎回まいかい、利益りえきが出でていると表示ひょうじされていたため、「あまりにもうまく行いきすぎだ」と感かんじてインターネットなどで調しらべたところ、だまされた可能かのう性せいがあると気付きづいたということです。

男性だんせいはグループのメンバーに連絡れんらくを取とり、振り込ふりこんだ金きんを返かえすよう催促さいそくしていますが、「気長きながに待まってください」と言いわれるだけで返金へんきんに至いたっておらず、現在げんざい、警察けいさつに相談そうだんしているということです。

（男性だんせい）
「自分じぶんは詐欺さぎに遭あわないと思おもっていた。だまされたということは自分じぶんの恥はじなのでもんもんとしている。このグループはいまも活動かつどうしているので、被害ひがいは大おおきくなっていくと思おもう」

詐欺さぎ事件じけんとして警察けいさつが捜査そうさを始はじめたケースも

LINEのグループに勝手かってに追加ついかする手口てぐちの“投資とうし”勧誘かんゆうをめぐっては、警察けいさつが詐欺さぎ事件じけんとして捜査そうさを始はじめたケースもあります。

徳島とくしま県けんに住すむ60代だいの男性だんせいがおよそ2000万まん円えんをだまし取だましとられた被害ひがいです。

警察けいさつによりますと、男性だんせいはことし1月つき、数すう十じゅう人にんが参加さんかする「投資とうし学習がくしゅう」や「投資とうし交流こうりゅう」という名前なまえの2つのLINEグループに突然とつぜん、追加ついかされました。これらのグループでは、投資とうしに詳くわしいというメンバーが参加さんか者しゃに投資とうし情報じょうほうを教おしえていて、「アドバイスどおりにしたら利益りえきが出でました」といったやりとりもあったということです。

「FXはすごい勢いきおいでチャンス」

男性だんせいはやりとりを見みるだけでしたが、1週間しゅうかんほどたったころ、リーダー格かくのメンバーから「どのような投資とうしに関心かんしんがありますか」と個別こべつにメッセージが届とどき、投資とうしのポイントを教おそわるようになりました。

さらに、別べつのメンバーから「今いま、FXはすごい勢いきおいで、チャンスだ」とか「指示しじどおりすれば利益りえきが出でる」と持もちかけられ、外貨がいかを売買ばいばいするFX取引とりひきへの投資とうしに勧誘かんゆうされたということです。

男性だんせいは指定していされた銀行ぎんこう口座こうざに投資とうし資金しきんとして合あわせておよそ2000万まん円えんを振り込ふりこみましたが、その後そのご、出金しゅっきんしようとしたところ引き出ひきだすことができず、詐欺さぎだと気付きづきました。

徳島とくしま県けんではことしに入はいり、同おなじような手口てぐちでほかにも2人にんが合あわせて5000万まん円えん余あまりをだまし取だましとられていて、警察けいさつは詐欺さぎ事件じけんとして捜査そうさを進すすめています。

LINEの機能きのう悪用あくようか

なぜ勝手かってにLINEのグループに入いれられてしまったのか。

LINEには、相手あいての電話でんわ番号ばんごうやIDを知しっていれば、相手あいての承諾しょうだくと関係かんけいなく自動的じどうてきに「友ともだち」に追加ついかできる機能きのうがあります。つまり、任意にんいの電話でんわ番号ばんごうなどを入力にゅうりょくすることで、不ふ特定とくてい多数たすうの面識めんしきのない人ひとを「友ともだち」に追加ついかすることができるのです。

さらに「友ともだち」であれば、相手あいての承諾しょうだくと関係かんけいなくグループに追加ついかできる機能きのうもあるため、こうした機能きのうが悪用あくようされたとみられています。

LINE設定せっていで被害ひがい防ふせぐには

LINEの設定せっていを変かえることで、グループに勝手かってに追加ついかされることを防ふせぐことができます。

具体ぐたい的てきな方法ほうほうです。
▽画面がめん下部かぶの「ホーム」タブをタップ
▽右みぎ上じょうにある「設定せってい」ボタンをタップ
▽「プライバシー管理かんり」をタップし、「IDによる友ともだち追加ついかを許可きょか」をオフに
▽「設定せってい」画面がめんに戻もどり、「友ともだち」をタップ
▽「友ともだちへの追加ついかを許可きょか」をオフに

この設定せっていで、自動じどう的てきにグループに追加ついかされなくなります。また、「友ともだち」以外いがいからのメッセージの受信じゅしんを拒否きょひする「メッセージ受信じゅしん拒否きょひ」や、特定とくていの相手あいてからのメッセージを受け取うけとらないようにする「ブロック」の機能きのうを使つかうことも有効ゆうこうだということです。

SNSでの“投資とうし”トラブル 相談そうだん相次あいつぐ

東京とうきょう都と消費しょうひ生活せいかつ総合そうごうセンターによりますと、SNSを通をつうじて投資とうしなどの勧誘かんゆうを受うけた消費しょうひ者しゃトラブルの相談そうだん件数けんすうは、2020年度ねんどまでは100件けん前後ぜんごで推移すいいしていました。

しかし、2021年度ねんどには306件けんと急増きゅうぞうし、2022年度ねんどは314件けんとこれまでで最もっとも多おおくなりました。中なかでも目立めだつのが、このLINEグループに勝手かってに追加ついかされ、投資とうし勧誘かんゆうを受うけるケースだということです。

東京とうきょう都と消費しょうひ生活せいかつ総合そうごうセンター 高村たかむら淳子じゅんこ相談そうだん課長かちょう
「20代だいが圧倒的あっとうてきに多おおいボリュームゾーンですが、年代ねんだいがかなり上じょうの人ひとの被害ひがいも増ふえてきているのが見て取みてとれます。ガラケーからスマートフォンに切り替きりかえる時期じきに重かさなっていることや、ウェブ上じょうでのやり取やりとりに消費しょうひ者しゃの抵抗ていこうが薄うすまっていることが考かんがえられます」

無料むりょう通信つうしんアプリのグループに勝手かってに追加ついかする手口てぐちについては、「無料むりょう通信つうしんアプリでは、通常つうじょう、電話でんわ番号ばんごうを登録とうろくしている人ひとの情報じょうほうが入はいってくるので、全まったく知しらない人ひとからメッセージが届とどくという感覚かんかくが薄うすいのではないか。知しらない人ひとからのもうけ話はなしの勧誘かんゆうには応おうじず、不安ふあんになったときは消費しょうひ生活せいかつ相談そうだんセンターや、周囲しゅういの人ひとに相談そうだんしてほしい」と話はなしています。

専門せんもん家か「“サクラ”の投稿とうこうで信用しんよう」

なぜ、こうした手口てぐちでだまされてしまうのか。

インターネット上じょうの金融きんゆうトラブルに詳くわしい成蹊大学せいけいだいがくの高橋たかはし暁子あきこ客員きゃくいん教授きょうじゅは、グループ内ないの投稿とうこうにいわゆる「サクラ」とみられる投稿とうこうが目立めだつと指摘してきします。

高橋たかはし暁子あきこ客員きゃくいん教授きょうじゅ
「クローズドなやりとりに持ち込もちこみ、『もっと投資とうしする』とか『もうかりました』と投稿とうこうさせる。そういうメッセージが多おおく投稿とうこうされると、『みんながやっているから大丈夫だいじょうぶだ』という『エコーチェンバー現象げんしょう』が働はたらいてしまう。そして、『自分じぶんなら大丈夫だいじょうぶだろう』と正常せいじょう性せいバイアスも働はたらいて、つい信用しんようしてしまうのではないか。詐欺さぎの典型てんけい的てきな手口てぐちだ」

LINE「応答おうとうせず通報つうほうを」

「LINE」はNHKの取材しゅざいに対にたいし、次つぎのようにコメントしました。

「このような不正ふせい行為こういがあることは大変たいへん遺憾いかんに思おもっています。関係かんけい機関きかんとの連携れんけいにより動向どうこうを把握はあくし、24時間じかん365日にち体制たいせいでAIと人力じんりきを組み合くみあわせたモニタリングの精度せいど向上こうじょうを図はかることで、今後こんごも安心あんしんしてサービスをご利用りよういただけるよう努つとめてまいります」

「『LINE』の利用りよう規約きやくでは、お客様おきゃくさまを無差別むさべつに友ともだちまたはグループトークに追加ついかする行為こういを禁止きんししていますので、ユーザーの皆みなさまは怪あやしいメッセージが届とどいたり、怪あやしいグループに招待しょうたいされた場合ばあい、決けっして応答おうとうせずに通報つうほうしてほしい」

ソース：NHK ニュース