レイプドラッグ対策たいさくの睡眠薬すいみんやく 逮捕たいほの美容びよう師し 巧たくみに飲のませたか

カットモデルに勧誘かんゆうした女性じょせいに睡眠薬すいみんやくを混まぜた紅茶こうちゃを飲のませて、わいせつな行為こういをしたとして逮捕たいほされた美容びよう師しの男おとこ。睡眠薬すいみんやくは効き目ききめが強つよいため、水みずに溶とかすと青あおい色いろに変かわるレイプドラッグへの対策たいさくが施ほどこされたものだったことが警視庁けいしちょうへの取材しゅざいで分わかりました。しかし男おとこは「紅茶こうちゃと同おなじ味あじだ」と安心あんしんさせて飲のませていたほか、最近さいきんはカラフルなお茶おちゃが女性じょせいに人気にんきがあることから、専門せんもん家かは今いまの対策たいさくだけでは限界げんかいがあると指摘してきしています。

東京とうきょう 銀座ぎんざのヘアサロンの美容びよう師し、青あお鹿しか宏昭ひろあき容疑ようぎ者しゃ（33）は、ことし８月はちがつ店内てんないで睡眠すいみん薬やくを混まぜた紅茶こうちゃを20代だいの女性じょせい客きゃくに飲のませ、意識いしきがもうろうとなった状態じょうたいでわいせつな行為こういをした疑うたがいがもたれています。

青あお鹿しか容疑ようぎ者しゃは「カットモデルをしないか」と女性じょせいを勧誘かんゆうし、店みせに呼び出よびだしたということです。

その後そのごの調しらべで、使つかわれた睡眠薬すいみんやくは効き目ききめが強つよいため、水みずに溶とかすと青あおい色いろに変化へんかするレイプドラッグへの対策たいさくが施ほどこされたものだったことが捜査そうさ関係かんけい者しゃへの取材しゅざいで分わかりました。

女性じょせいに出だされたのはレモンティーで、睡眠薬すいみんやくの影響えいきょうで茶色ちゃいろだったものが緑色りょくしょくに変色へんしょくしていましたが、青あお鹿しか容疑ようぎ者しゃは「紅茶こうちゃと同おなじ味あじだから大丈夫だいじょうぶだよ」と安心あんしんさせて飲のませたということです。

最近さいきんはブルーやグリーン、パープルのハーブティーなど、カラフルなお茶おちゃが女性じょせいに人気にんきで、レイプドラッグに詳くわしい専門せんもん家かは、睡眠薬すいみんやくに着色ちゃくしょくさせるという今いまの対策たいさくだけでは限界げんかいがあり、再さい検討けんとうが必要ひつようだと指摘してきしています。

モデルに誘さそわれた女性じょせいたち

青あお鹿しか容疑ようぎ者しゃは、「カットモデルをしないか」とツイッターや専用せんようのアプリで女性じょせいを誘さそっていたということです。

ネットに投稿とうこうされた動画どうがには、カットモデルの女性じょせいと会話かいわしながら毛け先さきの状態じょうたいを確認かくにんする様子ようすが残のこされていました。

４よん年ねん前まえに勧誘かんゆうされたという20代だいの女性じょせいは「『銀座ぎんざの美容びよう師しです。撮影さつえいお願おねがいします』といきなり連絡れんらくが来きました。店みせの名前なまえも教おしえてくれずおかしいなと思おもっていると、『明日あした撮影さつえいお願おねがいします』とメッセージが届とどき、あまりに急きゅうなので断ことわりを入いれたところ、別べつの日ひを提示ていじしてきました。その日ひも都合つごうが悪わるく断ことわったのですが、何なん度ども同おなじ日ひを提示ていじしてきて、あげくのはてに逆ぎゃくギレされました」と話はなしました。

そのうえで「美容びよう室しつは飲み物のみものを出だしてくれますが、まさか睡眠すいみん薬やくが入はいっているとは思おもいません。美容びよう室しつには防犯ぼうはんカメラがあるとも思おもえず、『警戒けいかい心しんがなかった』と言いわれ泣き寝入なきねいりになってしまうと思おもいます。モデルとして撮影さつえいしてもらえると思おもうとうれしいので、その気持きもちを踏ふみにじるのは悲かなしいし、本当ほんとうに許ゆるせないです」と話はなしていました。

また、青あお鹿しか容疑ようぎ者しゃのカットモデルをしたことがあるという女性じょせいは、ツイッターを通つうじた取材しゅざいに対にたいし、「カットしている最中さいちゅうに、『モデルは好このみの女の子おんなのこしか声こえをかけない』と言いっていました。時間じかんにも女性じょせいにもルーズな印象いんしょうでした」と話はなしていました。

睡眠薬すいみんやくに着色ちゃくしょくも限界げんかいが

事件じけんで使つかわれた睡眠薬すいみんやくには、レイプドラッグとして悪用あくようされるのを防ふせぐために、水みずに溶とかすと色いろが変化へんかする対策たいさくが施ほどこされていました。

専門せんもん家かによりますと、この睡眠すいみん薬やくは比較的ひかくてき効きいている時間じかんが長ながいという特徴とくちょうがあり、アメリカでは悪用あくようされるケースが相次あいつぎ、違法いほう薬物やくぶつに指定していされているということです。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうは製薬せいやく会社かいしゃに対にたいし、視覚しかく的てきに異変いへんに気き付つけるような措置そちを取とるよう求もとめ、４よん年ねん前まえに水みずに溶とかすと色いろが変かわる対策たいさくが取とられたということです。

今回こんかい、製薬せいやく会社かいしゃに協力きょうりょくを依頼いらいし実際じっさいに水みずに溶とかしたところ、青あおい色いろに変化へんかしました。

開発かいはつにあたっては、ほかの薬くすりに着色ちゃくしょく剤ざいがうつらないよう、専用せんようの製造せいぞうラインを設もうけるなど５ご億おく円えんを超こえるコストがかかったということです。

今回こんかいの事件じけんでは、レモンティーに睡眠すいみん薬やくが混まぜられたということで、実際じっさいに試ためしたところ、茶色ちゃいろだったレモンティーが緑色りょくしょくに染そまりました。ただ、味あじは変かわりませんでした。

製薬せいやく会社かいしゃは着色ちゃくしょくすることで被害ひがいを防ふせぎたいとしていますが、コーヒーなどの色いろの濃こいものに入いれられた場合ばあいや、薄暗うすぐらい場所ばしょだと気付きづくのが難むずかしくなるなど限界げんかいはあるとして、体からだに異変いへんを感かんじたら医療いりょう機関きかんに行いくよう求もとめています。

製薬せいやく会社かいしゃの社長しゃちょうは「不眠症ふみんしょうに悩なやむ人ひとには有効ゆうこうな薬くすりなので、レイプドラッグとして使つかわれるのは非常ひじょうに不ふ本意ほんいだ。着色ちゃくしょくを施ほどこすのは有効ゆうこうな対策たいさくの１ひとつだと思おもい努力どりょくしているが、被害ひがい者しゃが気付きづかない場合ばあいもあるという点てんで限界げんかいも感かんじ、非常ひじょうに悩なやましい」と話はなしていました。

支援しえん団体だんたい「すぐに相談そうだんして」

レイプドラッグを使つかった性せい犯罪はんざいの被害ひがい者しゃを支援しえんする団体だんたいは「被害ひがいに遭あったと思おもったらすぐに相談そうだんしてほしい」と呼よびかけています。

大阪おおさか 松原まつばら市しのＮＰＯえぬぴ-お-法人ほうじん「性せい暴力ぼうりょく救援きゅうえんセンター・大阪おおさかＳＡＣＨＩＣＯ」は、阪南はんなん中央ちゅうおう病院びょういんを拠点きょてんに支援しえん員いんが24時間じかん相談そうだんを受うけ、産婦人科さんふじんかの医師いしと連携れんけいしながら対応たいおうに当あたっています。

団体だんたい発足ほっそくから９きゅう年間ねんかんで、性せい被害ひがいを受うけた人ひとのうち薬物やくぶつが使つかわれた疑うたがいがあるのは77人にんに上のぼりますが、周囲しゅういに相談そうだんできないまま体内たいないから薬くすりの成分せいぶんが消きえてしまうなど、潜在せんざい的てきな被害ひがい者しゃは多おおくいるとみられています。

団体だんたいでは、薬くすりの成分せいぶんが含ふくまれている可能かのう性せいがある女性じょせいの血液けつえきや尿にょうなどを冷凍れいとう保管ほかんして被害ひがいを訴うったえる時ときに備そなえていて、「72時間じかん以内いないの対応たいおう」が重要じゅうようだとしています。

これまでの相談そうだんでは、仕事しごとの訪問ほうもん先さきで「健康けんこう茶ちゃ」だと言いわれて出だされたお茶おちゃや、駅前えきまえで「健康けんこう食品しょくひんのモニターをしないか」と勧誘かんゆうされた時ときの飲み物のみものに薬くすりを入いれられるなど、酒さけの席せきに限かぎらず、身近みぢかな場面ばめんでも被害ひがいが出でているということです。

団体だんたいの代表だいひょうで産婦人科さんふじんか医いの加藤かとう治子はるこさんは「自分じぶんに何なにが起おこり、どういう被害ひがいに遭あったのか説明せつめいできず、悔くやしい思おもいをする被害ひがいです。人ひとを信しんじられなくなり、フラッシュバックもするなど、体からだだけでなく心こころにも深刻しんこくな影響えいきょうを及およぼします。ただ、希望きぼうを捨すてる必要ひつようはないので、被害ひがいに遭あったと思おもったらまずは相談そうだんしてほしい」と話はなしていました。

識者しきしゃ「安全あんぜんとコストの議論ぎろん必要ひつよう」

レイプドラッグに詳くわしい京都きょうと大学だいがくの松原まつばら和夫かずお教授きょうじゅは、睡眠薬すいみんやくの錠剤じょうざいを水みずに溶とかすと色いろが変化へんかする対策たいさくについて、「水みずに溶とかされればすごく色いろがつくので分わかる。ただ、色いろの濃こいもの、あるいは濁にごったものに溶とかした場合ばあいは分わからないし、暗くらい場所ばしょであっても分わからない。だから完全かんぜんではない」と指摘してきしました。

一方いっぽうで、錠剤じょうざいを砕くだけないようにしたり、水みずに溶とけないようにしたりする技術ぎじゅつもあり、がんなどの痛いたみを軽減けいげんさせるために使つかわれる医療いりょう用ようの麻薬まやくに取り入とりいれられているということです。

こうした技術ぎじゅつについて松原まつばら教授きょうじゅは「溶とけない、砕くだけないから、人ひとの飲み物のみものに混まぜることもできなくなる。そういった防止ぼうし策さくを持もった薬くすりは開発かいはつされている。ただ、やはりコストがかかる。いま、１いち錠じょう５ご円えん程度ていどで買かえる睡眠薬すいみんやくにどれだけコストがかかるのか、本当ほんとうにペイできるのか。使つかうのは高齢こうれい者しゃが多おおいので負担ふたんも大おおきくなる」として、安全あんぜん対策たいさくの徹底てっていとコストの兼ね合かねあいについても議論ぎろんが必要ひつようだと指摘してきしました。

ソース：NHK ニュース