ミャンマー 戦闘せんとう激化げきかで軍兵ぐんびょう士し投降とうこう相次あいつぐ 軍ぐん将校しょうこうが内情ないじょう明あきらかに

ミャンマーでクーデター後ご、実権じっけんをにぎる軍ぐんと少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくや民主みんしゅ派は勢力せいりょくとの戦闘せんとうが激はげしさを増まし、軍ぐんの兵士へいしの投降とうこうが相次あいつぐ異例いれいの事態じたいとなっています。投降とうこうしたミャンマー軍ぐんの将校しょうこうが、NHKのインタビューに応おうじ、軍ぐん内部ないぶの統制とうせいが乱みだれ、士気しきが低下ていかしている内情ないじょうを明あきらかにしました。

ミャンマーでは、ことし10月つき27日にちに3つの少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくが東部とうぶシャン州しゅうで一斉いっせいに攻撃こうげきを開始かいしし、民主みんしゅ派は勢力せいりょくとも連携れんけいして攻勢こうせいを強つよめています。

ミャンマー軍ぐんはおととしのクーデター後ご初はじめて各地かくちで守勢しゅせいに立たたされていて、民主みんしゅ派は勢力せいりょくの組織そしき「国民こくみん統一とういつ政府せいふ」は、先月せんげつ29日にちまでに541人にんの兵士へいしが投降とうこうしたと明あきらかにしています。

こうした中なか南東なんとう部ぶカレン州しゅうで少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょく、KNU＝カレン民族みんぞく同盟どうめいに投降とうこうした軍ぐんの将校しょうこうが、少数しょうすう民族みんぞく側がわの監督かんとく下かでNHKのインタビューに応おうじました。

この将校しょうこうは先月せんげつ、橋はしを守まもっていた際さいに2日にち半はんにわたって攻撃こうげきをうけ、孤立こりつ無援むえんのなか20人にんの部下ぶかとともに投降とうこうをしたということで、当時とうじの状況じょうきょうについて「53人にんいた部下ぶかのうち、25人にんが戦死せんしした。生いきていられるだけ自分じぶんたちは幸運こううんだった」と投降とうこうするほかに選択肢せんたくしはなかったと語かたりました。

そのうえで「私わたしはみずからの身みを守まもるため、投降とうこうする道みちを選えらび、その判断はんだんに悔くいはない。ほかの兵士へいしもみずからのため、行動こうどうする時ときだ」と投降とうこうを呼よびかけました。

また軍ぐんトップのミン・アウン・フライン司令しれい官かんについては、「道みちを踏み外ふみはずしつつある。軍ぐん内部ないぶで司令しれい官かんの指導しどう力りょくを信しんじる者ものはもはやいない。軍ぐんにいる兵士へいしやスタッフで以前いぜんのように彼かれを信奉しんぽうする者ものはいない」と述のべ、軍ぐん内部ないぶで統制とうせいが乱みだれ、士気しきが低下ていかしている状況じょうきょうを明あきらかにしました。

投降とうこうした軍ぐんの兵士へいしたちは比較的ひかくてき自由じゆうな生活せいかつを許ゆるされている様子ようすですが、少数しょうすう民族みんぞく側がわが撮影さつえいした映像えいぞうでは橋はしの前まえに整列せいれつして軍ぐんの攻撃こうげきによって犠牲ぎせいとなった人ひとたちを追悼ついとうする敬礼けいれいを強しいられている姿すがたも写うつっていて、市民しみんに銃口じゅうこうを向むけてきた軍ぐんへの反発はんぱつの根強ねづよさもうかがわせています。

ミャンマー軍ぐんの兵士へいしは家族かぞくとともに軍ぐんの施設しせつ内ないで集団しゅうだん生活せいかつを送おくり、相互そうご監視かんしや上官じょうかんによる洗脳せんのうで、命令めいれいに背そむけない環境かんきょうに置おかれているとみられ、兵士へいしの投降とうこうが相次あいつぐのは異例いれいの事態じたいです。

軍ぐんの報道ほうどう官かんは4日にち、国営こくえいメディアを通をつうじて「通告つうこくなく軍ぐんから離はなれた兵士へいしが軍ぐんに戻もどってくるなら、無む許可きょか欠けつ務つとむとするだけで軍務ぐんむへの復帰ふっきを認みとめる」と呼よびかけていて、兵員へいいんが不足ふそくしている状況じょうきょうを事実じじつ上じょう、認みとめています。

専門せんもん家か「奇襲きしゅうのような形かたちで攻撃こうげき受うけ投降とうこうのケース増加ぞうか」

ミャンマー情勢じょうせいに詳くわしい京都きょうと大学だいがく東南アジアとうなんあじあ地域ちいき研究けんきゅう研究所けんきゅうじょの中西なかにし嘉宏よしひろ准じゅん教授きょうじゅは、兵士へいしの投降とうこうが相次あいつぐ背景はいけいについて「国境こっきょうに近ちかい地域ちいきなどで軍ぐんが劣勢れっせいになるなか、前線ぜんせんの兵士へいしが時ときには奇襲きしゅうのような形かたちで攻撃こうげきを受うけ、耐たえきれずに投降とうこうするケースが増ふえている」と分析ぶんせきしています。

その上うえで「命いのちの危険きけんがあれば軍ぐんから逃げ出にげだす兵士へいしもいて、士気しきは決けっして高たかくない。これまで軍ぐんに多おおくの兵士へいしを供給きょうきゅうしていた地域ちいきを軍ぐん側がわが統治とうちできなくなっていて、戦闘せんとうが激はげしい地域ちいきには兵士へいしを送おくることができず、ローテーションもできなくなっている」と述のべ、兵士へいしの不足ふそくや士気しきの低下ていかも一因いちいんにあると指摘してきしています。

そして「抵抗ていこう勢力せいりょくは、軍ぐんに対抗たいこうし、軍ぐんが統治とうちしている地域ちいきを少すこしでも自分じぶんたちのものにしたいという点てんで利益りえきが一致いっちしている。そのため、かつてよりも連携れんけいが取とれるようになってきたことは大おおきな転換てんかん点てんといえる」と評価ひょうかしました。

一方いっぽうで今後こんごの展開てんかいについては「現在げんざい戦闘せんとうが行おこなわれている山岳さんがく地帯ちたいや自然しぜん環境かんきょうの厳きびしい地域ちいきとは異ことなり、内陸ないりくの平野へいや部ぶに入はいるほどゲリラ戦せんに限界げんかいがあるため火力かりょくに勝まさる軍ぐん側がわが巻き返まきかえす可能かのう性せいが高たかい。抵抗ていこう勢力せいりょくとしても一般いっぱん市民しみんへの被害ひがいが出でる都市とし部ぶでの戦闘せんとうはなるべく避さけたいと考かんがえていて慎重しんちょうになるだろう」と述のべ、軍事ぐんじ的てきな手段しゅだんだけでは事態じたいが一気いっきに進展しんてんすることはないという見通みとおしを示しめしました。

その上うえで政治せいじ的てきな解決かいけつの可能かのう性せいについては「軍ぐんがこれまでの弾圧だんあつの責任せきにんを取とるというプロセスがなければ対話たいわは成立せいりつしないだろう。責任せきにんをとるべきと考かんがえる人ひとたちが軍ぐん内ないで出でてくることを期待きたいして抵抗ていこう勢力せいりょくは圧力あつりょくをかけている。そのためならたとえ長期間ちょうきかんでも抵抗ていこうを続つづける覚悟かくごが少数しょうすう民族みんぞく勢力せいりょくの中なかにも民主みんしゅ派は勢力せいりょくの中なかにもあるようだ」と述のべました。

クーデター後ごのミャンマー

ミャンマーではおととし2月つきのクーデター以降いこう、軍ぐんトップのミン・アウン・フライン司令しれい官かんが実権じっけんを握にぎり、民主みんしゅ派は勢力せいりょくとそれを支援しえんする少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくが各地かくちで抵抗ていこうを続つづけています。

軍ぐんは戦闘せんとう機きで無む差別さべつ的てきな空爆くうばくなどを繰り返くりかえすなど圧倒的あっとうてきな軍事ぐんじ力りょくで制圧せいあつを試こころみていて、ミャンマーの人権じんけん団体だんたいのまとめでは戦闘せんとうに巻き込まきこまれるなどしてこれまでに4000人にん以上いじょうが死亡しぼうしています。

またクーデター後ご、現在げんざい78歳さいとなる民主みんしゅ派は指導しどう者しゃのアウン・サン・スー・チー氏しは、非公式ひこうしきな裁判さいばんで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけ、27年ねんの刑期けいきが言い渡いいわたされ、首都しゅとネピドーの刑務所けいむしょに拘束こうそくされています。

外部がいぶとの接触せっしょくはほとんど許ゆるされておらず、ことし7月つきには当時とうじのタイ外相がいしょうが面会めんかいしたとしていますが、その後そのごは弁護士べんごしすら面会めんかいできない状況じょうきょうが続つづいています。

関係かんけい者しゃによりますと、この夏なつには体調たいちょうを崩くずし、めまいやおう吐おうとなどの症状しょうじょうが出でたということで、拘束こうそくが長期ちょうき化かするなか体調たいちょうを心配しんぱいする声こえがあがっています。

一方いっぽうで軍ぐんはスー・チー氏しが率ひきいる政党せいとうNLD＝国民こくみん民主みんしゅ連盟れんめいを非合法ひごうほう化かしたうえで、民政みんせい移管いかんに向むけた「公正こうせいな選挙せんきょ」を行おこなうと主張しゅちょうしていて、ことし9月つきには政せい係がかり者しゃを集あつめて選挙せんきょに関にかんする説明せつめい会かいも開催かいさいしました。

ただ選挙せんきょの実施じっしにはクーデターに伴ともなって発令はつれいされた非常ひじょう事態じたい宣言せんげんの解除かいじょが前提ぜんていとなりますが、民主みんしゅ派は勢力せいりょくなどとの戦闘せんとうが続つづくかぎり、軍ぐんは延長えんちょうを繰り返くりかえすとの見方みかたもあり、選挙せんきょの実施じっしは見通みとおせない状況じょうきょうです。

3つの少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくが一斉いっせい攻撃こうげき“1027作戦さくせん”とは

「1027作戦さくせん」は、ミャンマー東部とうぶのシャン州しゅうで3つの少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくがミャンマー軍ぐんに対にたいして一斉いっせいに攻撃こうげきを開始かいしした作戦さくせんの名前なまえで、10月つき27日にちに攻撃こうげきを始はじめたことから呼よばれるようになりました。

この作戦さくせんに加くわわるのは、東部とうぶシャン州しゅうを拠点きょてんとする▽MNDAA＝ミャンマー民族みんぞく民主みんしゅ同盟どうめい軍ぐん、▽TNLA＝タアウン民族みんぞく解放かいほう軍ぐん、そして西部せいぶラカイン州しゅうが拠点きょてんの▽AA＝アラカン軍ぐんで、いずれもおととしのクーデター以前いぜんからミャンマー軍ぐんに抵抗ていこうして一定いっていの支配しはい地域ちいきを維持いじしてきました。

戦闘せんとうは当初とうしょ、東部とうぶシャン州しゅうの中国ちゅうごくとの国境こっきょう周辺しゅうへんが中心ちゅうしんで少数しょうすう民族みんぞく側がわは中国ちゅうごくとの交易こうえき拠点きょてんの町まちや軍ぐんの施設しせつなどを次々つぎつぎと支配しはい下かにおさめていきました。

さらに戦闘せんとうは西部せいぶのラカイン州しゅうにも広ひろがり、国くにの東西とうざいから軍ぐんへの圧力あつりょくを強つよめていきました。

こうした動うごきに民主みんしゅ派は勢力せいりょくも呼応こおうして攻勢こうせいを強つよめていて、同時どうじ多発たはつ的てきな動うごきに対応たいおうが難むずかしくなった軍ぐんは各地かくちで拠点きょてんを奪うばわれ、投降とうこうや脱走だっそうする兵士へいしが増ふえ続つづけています。

また作戦さくせんの影響えいきょうは都市とし部ぶにも広ひろがっていて、先月せんげつ25日にちには最大さいだい都市としヤンゴンの郊外こうがいで市民しみんが突発とっぱつ的てきなデモを展開てんかいするなど、軍ぐんの監視かんしが行き届いきとどかなくなっていることを伺うかがわせています。

一方いっぽうで戦闘せんとうの拡大かくだいで家いえを追おわれる人ひとたちも増ふえていてOCHA＝国連こくれん人道じんどう問題もんだい調整ちょうせい事務所じむしょは8日にち、一斉いっせい攻撃こうげきが始はじまって以来いらいの1か月かげつあまりで、新あらたに50万まん人にんが国内こくない避難ひなん民みんになったとして国際こくさい社会しゃかいの支援しえんを求もとめています。

クーデター後ご初はじめて各地かくちで軍ぐんが守勢しゅせいに立たたされる事態じたいに軍ぐんトップのミン・アウン・フライン司令しれい官かんは4日にち、「もし武装ぶそう勢力せいりょくが戦闘せんとうを続つづけるのであればその地域ちいきの住民じゅうみんが苦くるしむことになる。こうした武装ぶそう勢力せいりょくは政治せいじ的てきに解決かいけつする必要ひつようがある」と述のべました。

これまで民主みんしゅ派は勢力せいりょくや、それを支援しえんする少数しょうすう民族みんぞくの武装ぶそう勢力せいりょくを「テロリスト」と呼よんで対話たいわを拒こばみ続つづけてきた司令しれい官かんが「政治せいじ的てきな解決かいけつ」に言及げんきゅうしたことで、その意図いとに関心かんしんが集あつまっています。

ソース：NHK ニュース