Hiện Furigana
きょうトルコ大統領選挙 物価高騰や地震対応で現職に逆風
2023-05-13 21:56:49

ウクライナ情勢で仲介役を買って出るなど存在感を増す中東のトルコで、14日、大統領選挙が行われます。
現職のエルドアン氏は物価の高騰や2月に起きた大地震の対応などで逆風にさらされていて、選挙の結果次第では国際情勢にも影響を与えるだけに行方が注目されます。
現職のエルドアン氏は物価の高騰や2月に起きた大地震の対応などで逆風にさらされていて、選挙の結果次第では国際情勢にも影響を与えるだけに行方が注目されます。
トルコの大統領選挙は、再選を目指すエルドアン氏と、最大野党の党首で6つの野党の統一候補として立候補したクルチダルオール氏の事実上の一騎打ちとなっています。
エルドアン氏はロシアの軍事侵攻が続くウクライナからの農産物の輸出の合意をはじめトルコの仲介外交の成果を誇るなど、首相時代も含め20年にわたる政権運営の実績を訴えています。
これに対し、クルチダルオール氏はエルドアン政権のもとで「通貨安や物価高騰が起きた」と指摘しているほか、ことし2月に南部で発生した大地震をめぐっては、初動対応の遅れや耐震基準を満たさない建物の建築を許したことが被害の拡大をもたらしたなどと批判しています。
また、外交面ではエルドアン政権のもとでぎくしゃくした欧米各国との関係改善を打ち出しています。
調査会社各社による最新の世論調査では、クルチダルオール氏がわずかにリードしているほか、投票日の3日前になって別の野党系の候補者の1人が撤退を表明したことで、クルチダルオール氏への追い風となっているとの指摘も出ています。
ただ、調査は都市部に偏っていて、エルドアン大統領の支持率が実態より低いとの指摘もあり、接戦が予想されています。
即日開票されますが、過半数を獲得する候補がいなければ、今月28日に上位2人による決選投票が行われることになっています。
選挙の結果次第では国際情勢にも影響を与えるだけに行方が注目されます。
政権継続・交代 求める双方の声
大統領選挙を翌日に控えた13日、最大都市イスタンブールの市民からは、エルドアン政権の継続を求める声と政権交代を求める声の双方が聞かれました。
現職のエルドアン氏に投票するという30歳の女性は「エルドアン政権が成し遂げてきたことに満足しています。大統領にとどまってくれればよいです」と話し、国の安定のためには政権の継続が必要だと話していました。
一方、クルチダルオール氏に投票するという25歳の男性は、物価の高騰が市民生活に深刻な影響を与えているとして「変化が必要です。今の状態では家も車も、必要なものは何も買えません」と話し、政権交代が必要だと訴えていました。
現職のエルドアン氏に投票するという30歳の女性は「エルドアン政権が成し遂げてきたことに満足しています。大統領にとどまってくれればよいです」と話し、国の安定のためには政権の継続が必要だと話していました。
一方、クルチダルオール氏に投票するという25歳の男性は、物価の高騰が市民生活に深刻な影響を与えているとして「変化が必要です。今の状態では家も車も、必要なものは何も買えません」と話し、政権交代が必要だと訴えていました。
大統領選の構図は
トルコの大統領選挙には現職のエルドアン氏、最大野党・共和人民党の党首、クルチダルオール氏など4人が立候補しています。
ただ、投票の3日前になり、1人が撤退を表明しました。
最大の争点は長期政権の是非です。
エルドアン氏は、首相時代も含めて20年にわたる内政外交の成果をアピールしつつ、選挙前に家庭用ガスの使用料の一部無料化や、学生への通信料無料化、さらに投票5日前には最低賃金の底上げを発表し、支持の拡大を図っています。
これに対して、中道左派、民族主義、それにイスラム主義の政党などによる超党派の6党の連合がクルチダルオール氏を擁立して挑む構図で、エルドアン氏の強権的な政権運営やことし2月の大地震への対応をめぐって批判を強めています。
また野党側は、トルコの人口の2割を占めるともされるクルド人の票の取り込みを図るためクルド系政党にも協力を要請しています。
7日付けのトルコの世論調査では、クルチダルオール氏がエルドアン大統領を5ポイント引き離し、5割を超える支持を得ています。
14日の投票で過半数の得票を得る候補者がいなかった場合には、上位2人による決選投票が、2週間後の28日に行われます。
ただ、投票の3日前になり、1人が撤退を表明しました。
最大の争点は長期政権の是非です。
エルドアン氏は、首相時代も含めて20年にわたる内政外交の成果をアピールしつつ、選挙前に家庭用ガスの使用料の一部無料化や、学生への通信料無料化、さらに投票5日前には最低賃金の底上げを発表し、支持の拡大を図っています。
これに対して、中道左派、民族主義、それにイスラム主義の政党などによる超党派の6党の連合がクルチダルオール氏を擁立して挑む構図で、エルドアン氏の強権的な政権運営やことし2月の大地震への対応をめぐって批判を強めています。
また野党側は、トルコの人口の2割を占めるともされるクルド人の票の取り込みを図るためクルド系政党にも協力を要請しています。
7日付けのトルコの世論調査では、クルチダルオール氏がエルドアン大統領を5ポイント引き離し、5割を超える支持を得ています。
14日の投票で過半数の得票を得る候補者がいなかった場合には、上位2人による決選投票が、2週間後の28日に行われます。
エルドアン氏とは
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は、1954年、イスタンブール生まれの69歳。
イスラム教の宗教指導者養成学校を経て大学を卒業し、イスラム系の政党での政治活動を行ったのち、1994年にイスタンブールの市長に初当選しました。
しかし、演説で戦闘的なイスラムの詩を朗読したことが扇動の罪に問われて実刑判決を受け解任されました。
その後、2001年にAKP=「公正発展党」を立ち上げて党首となり、2002年に総選挙で勝利し、翌年、首相に就任します。
また、2014年には国民が直接大統領を選ぶ初の選挙でも当選するなど、20年にわたって政権を率いています。
外交面では、ロシアのプーチン大統領と直接、対話できる数少ない首脳として国際社会での存在感を増し、ウクライナ産の農産物輸出の再開では仲介役として実現にこぎつけました。
軍事面では、NATO=北大西洋条約機構の加盟国である一方、中国とロシアが主導する上海協力機構への加盟を示唆するなど、欧米とも中ロともバランスを取る独自の外交を進め、存在感を示してきました。
先月、エルドアン大統領は、テレビの生放送中に体調不良を訴えてインタビューを中断し、健康不安説も流れましたが、選挙戦で1時間以上の演説をこなし、健在ぶりをアピールしています。
イスラム教の宗教指導者養成学校を経て大学を卒業し、イスラム系の政党での政治活動を行ったのち、1994年にイスタンブールの市長に初当選しました。
しかし、演説で戦闘的なイスラムの詩を朗読したことが扇動の罪に問われて実刑判決を受け解任されました。
その後、2001年にAKP=「公正発展党」を立ち上げて党首となり、2002年に総選挙で勝利し、翌年、首相に就任します。
また、2014年には国民が直接大統領を選ぶ初の選挙でも当選するなど、20年にわたって政権を率いています。
外交面では、ロシアのプーチン大統領と直接、対話できる数少ない首脳として国際社会での存在感を増し、ウクライナ産の農産物輸出の再開では仲介役として実現にこぎつけました。
軍事面では、NATO=北大西洋条約機構の加盟国である一方、中国とロシアが主導する上海協力機構への加盟を示唆するなど、欧米とも中ロともバランスを取る独自の外交を進め、存在感を示してきました。
先月、エルドアン大統領は、テレビの生放送中に体調不良を訴えてインタビューを中断し、健康不安説も流れましたが、選挙戦で1時間以上の演説をこなし、健在ぶりをアピールしています。
クルチダルオール氏とは
ケマル・クルチダルオール氏は、東部トゥンジェリ生まれの74歳です。
財務官僚出身で2002年の総選挙で野党CHP=「共和人民党」から立候補して初当選しました。
今回、初めて大統領選挙に臨むクルチダルオール氏は、6つの野党の統一候補に指名されていて、エルドアン政権の強権的な政策やことし2月に起きた大地震への対応を厳しく批判してきました。
また、トルコでは国民投票を経て2018年に強大な権力が大統領に集中する実権型の大統領制に移行しましたが、クルチダルオール氏は元の議院内閣制に戻すとしています。
外交面でもエルドアン大統領のもとでぎくしゃくした欧米各国との関係改善を打ち出していて、EU加盟に向けた交渉についても、トルコが加盟して安定すればEU側にもメリットがあると訴え進展させたい考えを示しています。
演説などで強気の発言を繰り返すエルドアン氏とは対照的にクルチダルオール氏は選挙戦で穏やかに語りかけるような動画をSNSに多数投稿して親しみやすさをアピールしてきました。
また、自身はイスラム教の中でも少数派の信者であることを明かし、クルド人など国内のさまざまな少数派に寄り添う姿勢も示しています。
財務官僚出身で2002年の総選挙で野党CHP=「共和人民党」から立候補して初当選しました。
今回、初めて大統領選挙に臨むクルチダルオール氏は、6つの野党の統一候補に指名されていて、エルドアン政権の強権的な政策やことし2月に起きた大地震への対応を厳しく批判してきました。
また、トルコでは国民投票を経て2018年に強大な権力が大統領に集中する実権型の大統領制に移行しましたが、クルチダルオール氏は元の議院内閣制に戻すとしています。
外交面でもエルドアン大統領のもとでぎくしゃくした欧米各国との関係改善を打ち出していて、EU加盟に向けた交渉についても、トルコが加盟して安定すればEU側にもメリットがあると訴え進展させたい考えを示しています。
演説などで強気の発言を繰り返すエルドアン氏とは対照的にクルチダルオール氏は選挙戦で穏やかに語りかけるような動画をSNSに多数投稿して親しみやすさをアピールしてきました。
また、自身はイスラム教の中でも少数派の信者であることを明かし、クルド人など国内のさまざまな少数派に寄り添う姿勢も示しています。
エルドアン政権の20年
20年前の2003年、当時、首相に就任したエルドアン氏は、都市開発やインフラ整備などを推し進める中で外資を積極的に呼び込み、就任後の最初の6年間で国民1人当たりのGDPをおよそ3倍に増やすなど目覚ましい経済発展を実現させ、カリスマ的な指導者として国民の絶大な支持を集めました。
一方で、伝統的に政治と宗教を厳格に分ける政教分離が国是のトルコでイスラムの価値観を重んじる政策を進めてきたほか、建国以来、絶大な影響力を持っていた世俗派の軍や実業界の影響力を弱め、権力基盤を強めていきました。
そして、国民投票を経て実権的な大統領制への移行に伴い、エルドアン氏は大統領として実権を握り続けました。
一方で、政権に批判的なデモを弾圧するなど、言論統制を強め、強権的だという批判が高まり、欧米諸国とはぎくしゃくするようになりました。
国内でも2016年には軍の一部によるクーデター未遂が発生し、一時、窮地に立たされたものの、逆に反対派の締めつけを強化する結果となりました。
近年はインフレが続く中で、異例とも言える政策金利の引き下げを強く主張して通貨リラの暴落を招くなど経済の混乱への対応を迫られてきました。
また、ことし2月に南部で発生した大地震では初動対応の遅れや被害拡大の背景に支持母体の建設業界への配慮から違法建築を見過ごしてきたことがあったなどとして強い批判にもさらされ、20年にわたる長期政権への不満も出ています。
一方で、伝統的に政治と宗教を厳格に分ける政教分離が国是のトルコでイスラムの価値観を重んじる政策を進めてきたほか、建国以来、絶大な影響力を持っていた世俗派の軍や実業界の影響力を弱め、権力基盤を強めていきました。
そして、国民投票を経て実権的な大統領制への移行に伴い、エルドアン氏は大統領として実権を握り続けました。
一方で、政権に批判的なデモを弾圧するなど、言論統制を強め、強権的だという批判が高まり、欧米諸国とはぎくしゃくするようになりました。
国内でも2016年には軍の一部によるクーデター未遂が発生し、一時、窮地に立たされたものの、逆に反対派の締めつけを強化する結果となりました。
近年はインフレが続く中で、異例とも言える政策金利の引き下げを強く主張して通貨リラの暴落を招くなど経済の混乱への対応を迫られてきました。
また、ことし2月に南部で発生した大地震では初動対応の遅れや被害拡大の背景に支持母体の建設業界への配慮から違法建築を見過ごしてきたことがあったなどとして強い批判にもさらされ、20年にわたる長期政権への不満も出ています。
独自の外交を展開 日本とは良好な関係維持
トルコは、NATO=北大西洋条約機構の加盟国である一方、中国とロシアが主導する上海協力機構への加盟を示唆するなど、エルドアン政権下で独自の外交を展開してきました。
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐってはプーチン大統領と会談を重ね、仲介役として、ウクライナ産の農産物輸出の再開を国連とともに実現させました。
また、NATO加盟を申請したフィンランドとスウェーデンに対しては、ほとんどの加盟国が早々に支持した一方で、両国がトルコからの分離独立を掲げるクルド人武装組織への支援をやめなければ認められないとして、トルコが一歩も譲らない姿勢を示し、今もスウェーデンの加盟は実現していません。
一方、エルドアン大統領は20年前にはEU=ヨーロッパ連合の加盟を目指すことを公言していましたが、政権の強権化を指摘する欧米諸国とのあつれきなどから、いまだに加盟への道筋は立っていません。
日本との2国間関係では、東日本大震災の被災地に救助隊を派遣して3週間近くにわたって活動にあたり、ことし2月にトルコ南部で起きた大地震では日本からも国際緊急援助隊が駆けつけるなど、良好な関係を続けています。
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐってはプーチン大統領と会談を重ね、仲介役として、ウクライナ産の農産物輸出の再開を国連とともに実現させました。
また、NATO加盟を申請したフィンランドとスウェーデンに対しては、ほとんどの加盟国が早々に支持した一方で、両国がトルコからの分離独立を掲げるクルド人武装組織への支援をやめなければ認められないとして、トルコが一歩も譲らない姿勢を示し、今もスウェーデンの加盟は実現していません。
一方、エルドアン大統領は20年前にはEU=ヨーロッパ連合の加盟を目指すことを公言していましたが、政権の強権化を指摘する欧米諸国とのあつれきなどから、いまだに加盟への道筋は立っていません。
日本との2国間関係では、東日本大震災の被災地に救助隊を派遣して3週間近くにわたって活動にあたり、ことし2月にトルコ南部で起きた大地震では日本からも国際緊急援助隊が駆けつけるなど、良好な関係を続けています。
記録的な経済発展もインフレが市民生活を直撃
トルコではこの20年、エルドアン政権のもとで都市開発やインフラ整備などを推し進める中で外資を積極的に呼び込み、国民1人当たりのGDPは就任後最初の6年間でおよそ3倍となるなど、記録的な経済発展を遂げました。
しかし、エルドアン大統領は近年、「高金利は景気を冷やす」という信念のもと政策金利の引き下げを進め、おととし3月には19%だった政策金利をことし2月には8.5%と、10ポイント以上切り下げました。
こうした政策によって去年10月には前年同月比で85%を超えるインフレを記録し、食料品のほか公共交通機関の運賃なども跳ね上がって市民生活を直撃しているほか、通貨リラも右肩下がりとなり、過去2年でドルに対しての価値が半分以下になっています。
こうした中、最低賃金の底上げや年金受給開始年齢の引き下げなどの経済対策をやつぎばやに打ち出していますが、追いついていないのが実情で、市民生活は依然として苦しい状態が続いています。
しかし、エルドアン大統領は近年、「高金利は景気を冷やす」という信念のもと政策金利の引き下げを進め、おととし3月には19%だった政策金利をことし2月には8.5%と、10ポイント以上切り下げました。
こうした政策によって去年10月には前年同月比で85%を超えるインフレを記録し、食料品のほか公共交通機関の運賃なども跳ね上がって市民生活を直撃しているほか、通貨リラも右肩下がりとなり、過去2年でドルに対しての価値が半分以下になっています。
こうした中、最低賃金の底上げや年金受給開始年齢の引き下げなどの経済対策をやつぎばやに打ち出していますが、追いついていないのが実情で、市民生活は依然として苦しい状態が続いています。
議会選挙 政治体制が大きく変わる可能性も
今回の大統領選挙にあわせて、トルコでは600の議席を争う議会選挙も行われます。
議会は一院制で選挙前の議席数は、
▽与党AKP=公正発展党が285
▽最大野党CHP=共和人民党が134
▽クルド系政党のHDP=人民民主党が56
▽トルコ民族主義を掲げる右派のMHP=民族主義者行動党が48などとなっています。
選挙では、AKPとMHPの与党連合が過半数を獲得できるのか、それとも大統領選に野党統一候補としてクルチダルオール氏を擁立したCHPなどの野党6党を含め、野党側が過半数を得るのかが焦点です。
トルコは国民投票を経て2018年に大統領が強大な権力を握る実権型の大統領制に移行しましたが、議会の3分の2の承認があれば憲法改正を行って議院内閣制に戻すことなどに道を開くことにもなります。
大統領選挙に立候補している野党統一候補のクルチダルオール氏は、議院内閣制に戻すことを公約としていて、大統領選挙、そして議会選挙の結果によっては政治体制が大きく変わる可能性もあります。
議会は一院制で選挙前の議席数は、
▽与党AKP=公正発展党が285
▽最大野党CHP=共和人民党が134
▽クルド系政党のHDP=人民民主党が56
▽トルコ民族主義を掲げる右派のMHP=民族主義者行動党が48などとなっています。
選挙では、AKPとMHPの与党連合が過半数を獲得できるのか、それとも大統領選に野党統一候補としてクルチダルオール氏を擁立したCHPなどの野党6党を含め、野党側が過半数を得るのかが焦点です。
トルコは国民投票を経て2018年に大統領が強大な権力を握る実権型の大統領制に移行しましたが、議会の3分の2の承認があれば憲法改正を行って議院内閣制に戻すことなどに道を開くことにもなります。
大統領選挙に立候補している野党統一候補のクルチダルオール氏は、議院内閣制に戻すことを公約としていて、大統領選挙、そして議会選挙の結果によっては政治体制が大きく変わる可能性もあります。
ソース:NHK ニュース