「180度変わってしまった」福島第一原発 処理水放出 水産業は
2024-08-23 03:44:37

中国による日本産の水産物の輸入停止措置が継続している影響で、水産業や観光業では厳しい状況が続いています。苦悩する各地の現場です。
ホタテ・ホヤ 輸出先の開拓難しく
処理水の放出が始まって以降、中国や香港などによる日本産水産物の輸入停止の措置が継続している影響で、ホタテの輸出ができなくなった宮城県石巻市の水産事業者は、厳しい経営状況が続いています。
石巻市の寄磯浜でホタテやホヤなどの養殖や加工を行っている遠藤仁志さんは、およそ10年前からホタテを香港に輸出し、多い年でおよそ2500万円を売り上げていました。
しかし、処理水の放出以降、香港政府が宮城を含む10の都県からの水産物の輸入を禁止したことから、販路を失い、別の海外の輸出先を探すにしても中小の事業者では難しいのが現状だといいます。
また、国内向けに加工して出荷していたホタテも、放出前まで中国に輸出されていた北海道産などが市場に多く流れ込み、競争が激化して利益が見込めなくなっているということです。
このほか、ホヤをめぐっては、4年ほど前からアメリカ向けに出荷していましたが、取り引きをしていた企業から禁輸措置がないにもかかわらず「処理水の放出以降、現地の需要が減っている。当面、引き受けられる見通しがつかない」と通告を受け、今も輸出できない状態が続いているということです。
遠藤仁志さん
「放出前と後では国内向けも海外向けも180度くらい変わってしまい、会社として厳しい状態だ。海外の禁輸措置が解かれないと、北海道産などより安価なホタテがずっと国内市場に入ってきて、だんだんと宮城のものには目が向けられなくなってしまう。国や東京電力には、もっと全体の状況を把握して解決をしてほしい」
「ふざけるな」中国からの迷惑電話 いまも
福島県に隣接する茨城県北茨城市の観光業者では、今も中国から迷惑電話がかかってきているといいます。
福島第一原発にたまる処理水の海への放出が始まったあと、茨城県内の観光施設には、中国からとみられる迷惑電話が相次ぎました。
北茨城市平潟町の海沿いで特産のあんこう料理などを提供する民宿では、放出開始から1年がたちますが、宿泊客が減ることはなく、当初、懸念していた風評被害の影響は感じていないということです。
一方、この民宿でも去年8月から中国から迷惑電話がたびたびかかってきていて、いまも続いているということです。
留守番電話に残った録音にはカタコトで「もしもし」といったり、中国語で「なんで話さないんだ、ふざけるな」といったようなことばが残っていました。
このほか、無言の電話や早朝にかかってくる電話もあるということです。
仁井田康雅さん
「こうした電話は気持ちが悪いです。時間を問わずかかってくるので嫌な気分になり、出ないようにしています。処理水の放出だけでなく、廃炉作業はこれからも長く続いていくと思うので、何が起こるかわからないという気持ちがありますが、処理水の問題に負けないように経営していきたいです」
農林水産物の輸出拡大に向け支援 政府
政府は23日、農林水産物などの輸出拡大に向けて林官房長官や坂本農林水産大臣らが出席する会議を開きました。
政府は2025年までに農林水産物と食品の輸出額を2兆円に増やす目標を掲げていて、去年までは11年連続で輸出額の増加が続いてきましたが、ことし6月までの半年間では、中国による日本産水産物の輸入停止措置の影響もあって、前の年の同じ時期より1.8%減りました。
会議では、中国などに対し規制の即時撤廃を粘り強く求めるとともに、輸出先のニーズに対応できる産地づくりの推進や、海外の新たな市場開拓を支援するなど、輸出拡大に向けて政府一丸となって取り組んでいくことを確認しました。
会議の中で林官房長官は「目標達成のためには増加ペースを今まで以上に引き上げなければいけない。来年度予算の概算要求に必要な施策をしっかり盛り込み、取り組みを加速してほしい」と述べました。