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乳がんリスク高い体質の女性への通知 ガイドライン作成へ
2017-06-05 08:27:20

女性がなるがんで最も多い乳がんの検診で、がんが見逃されるリスクが比較的高い体質の女性にどのように通知するか自治体によって対応が異なり、患者団体などから批判が出ています。このため、厚生労働省はほかの検査を紹介するなど、きめ細かい対応を求めるガイドラインを作成することになりました。
40歳以上の女性を対象にした自治体の乳がん検診は国の指針で「マンモグラフィー」と呼ばれるエックス線の検査を行うことになっています。
ただ、日本乳癌検診学会によりますと、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い「高濃度乳房」という体質だと推定されています。この場合、がんが乳腺に隠れて画像に写りにくく、検査の精度が最大で50%ほど下がるとされ、見逃しのリスクが指摘されるようになりました。
しかし、国の指針ではこうした体質を通知するかどうか定めがなく、8割を超える自治体が乳がん検診の結果として、『異常なし』などと伝えるにとどまっていて、患者団体などから批判が出ています。
このため厚生労働省は5日、専門家会議を開き、高濃度乳房の場合、マンモグラフィー検査ではがんの判別が難しいとしたうえで、がんが見逃されるリスクをきちんと説明したり、超音波の検査など乳腺の密度が影響しない検査を紹介したりして、通知を受けた人が不安にならないよう自治体側にきめ細かい対応を求める方針を決めました。
厚生労働省は今後、自治体の対応をまとめたガイドラインを作成し、来年3月までに示したいとしています。
厚生労働省は「国としては有効性が確立しているマンモグラフィーを勧めているが、自治体には受診者に対し、体質を正しく理解してもらったうえで、自費で受けられる別の検査などを丁寧に示してほしい」と話しています。
ただ、日本乳癌検診学会によりますと、日本人女性のおよそ4割は乳腺の密度が高い「高濃度乳房」という体質だと推定されています。この場合、がんが乳腺に隠れて画像に写りにくく、検査の精度が最大で50%ほど下がるとされ、見逃しのリスクが指摘されるようになりました。
しかし、国の指針ではこうした体質を通知するかどうか定めがなく、8割を超える自治体が乳がん検診の結果として、『異常なし』などと伝えるにとどまっていて、患者団体などから批判が出ています。
このため厚生労働省は5日、専門家会議を開き、高濃度乳房の場合、マンモグラフィー検査ではがんの判別が難しいとしたうえで、がんが見逃されるリスクをきちんと説明したり、超音波の検査など乳腺の密度が影響しない検査を紹介したりして、通知を受けた人が不安にならないよう自治体側にきめ細かい対応を求める方針を決めました。
厚生労働省は今後、自治体の対応をまとめたガイドラインを作成し、来年3月までに示したいとしています。
厚生労働省は「国としては有効性が確立しているマンモグラフィーを勧めているが、自治体には受診者に対し、体質を正しく理解してもらったうえで、自費で受けられる別の検査などを丁寧に示してほしい」と話しています。
超音波検査 乳腺密度に関係なく病巣発見
マンモグラフィー検査は、乳房にエックス線を当てて作った画像を基に診断するもので、大部分を占める脂肪は黒く、がんの病巣は白く映り、がんが比較的小さな段階で見つけることができますが、乳腺も白く映るため、高濃度乳房の場合、全体に白いもやがかかってがんを発見しにくくなります。
一方、超音波の検査は乳房に超音波を当てて、そのはね返りをモニターに映し出すもので、乳腺の密度に関係なく病巣を浮かび上がらせることができるということです。
一方、超音波の検査は乳房に超音波を当てて、そのはね返りをモニターに映し出すもので、乳腺の密度に関係なく病巣を浮かび上がらせることができるということです。
高濃度乳房かどうか通知する自治体 全国の14%に
自治体が行っている「乳がん検診」は、国の指針で検査の方法などが定められています。しかし、結果については、異常がないか、がんの疑いがあるため精密検査が必要かの、「いずれかを通知する」としか定められていません。
このため、患者団体などからは高濃度乳房の場合、マンモグラフィーでがんの疑いがあるかを確認するのは難しく、体質を知らせずに「異常がない」と通知するのは不適切だと批判しています。
こうした中、独自の判断で高濃度乳房かどうかを通知している自治体は増え、厚生労働省によりますと、全国の市区町村のおよそ14%に当たる230に上っています。
通知の内容では、高濃度乳房かどうかに加え、「体質上、がんの判別が難しい」などと説明を付けたり、別の検査方法を伝えたりする、自治体も出ています。
このため、患者団体などからは高濃度乳房の場合、マンモグラフィーでがんの疑いがあるかを確認するのは難しく、体質を知らせずに「異常がない」と通知するのは不適切だと批判しています。
こうした中、独自の判断で高濃度乳房かどうかを通知している自治体は増え、厚生労働省によりますと、全国の市区町村のおよそ14%に当たる230に上っています。
通知の内容では、高濃度乳房かどうかに加え、「体質上、がんの判別が難しい」などと説明を付けたり、別の検査方法を伝えたりする、自治体も出ています。
学会「一律に通知は時期尚早」提言
日本乳癌検診学会はことし3月に高濃度乳房について、「乳房の体質を知る権利は尊重されるべき」とする一方、超音波の検査は検査後の死亡率を下げる効果が明らかではないうえ、体質について正しく説明できる医療側の態勢が整っていないとして、「一律に通知することは時期尚早だ」と提言しました。
提言をまとめた笠原善郎医師は「自治体の検診では受診者がたどるべき道筋を示すことが大切だ」としたうえで、「超音波検査については現在、有効性を検証中で、検査後の死亡率を下げる科学的な証拠が確立しているのは今のところ、マンモグラフィーだけと認識している」と話しています。
提言をまとめた笠原善郎医師は「自治体の検診では受診者がたどるべき道筋を示すことが大切だ」としたうえで、「超音波検査については現在、有効性を検証中で、検査後の死亡率を下げる科学的な証拠が確立しているのは今のところ、マンモグラフィーだけと認識している」と話しています。
「体質のことをなぜ教えてくれないのか」
川崎市の会社員、風間沙織さん(52)は高濃度乳房だったため、マンモグラフィー検査で乳がんを発見できなかった1人です。
風間さんは母親や親戚に乳がんが多いことから、20年近く毎年、マンモグラフィー検査を受け、結果はすべて「ほぼ正常」だったため、安心していたといいます。ところが、3年前に妹が乳がんとわかり、その直後に胸に固く小さなしこりがあるのを感じたため、精密検査を受けたところ、がんと診断されました。
そのとき、マンモグラフィーに加えて初めて超音波の検査を受けたということで、医師からは「超音波検査ではがんがはっきりと映っているが、マンモグラフィーでは全く見えない」と説明されたということです。
幸い小さながんで転移しておらず、左胸の摘出手術を受けたあとはこれまで再発もなく、仕事に復帰できたといいます。
風間さんはがんが偶然見つかるまで、自分が高濃度乳房だとは知らなかったということで、「知ったときに鳥肌が立つくらい恐ろしくなった。がんの発見がなければマンモグラフィー検査を受け続けていたはずで、気が付かないまま、がんがどれだけ大きくなっていたかわからない。大切な体質のことをなぜ教えてくれないのか」と話していました。
風間さんは母親や親戚に乳がんが多いことから、20年近く毎年、マンモグラフィー検査を受け、結果はすべて「ほぼ正常」だったため、安心していたといいます。ところが、3年前に妹が乳がんとわかり、その直後に胸に固く小さなしこりがあるのを感じたため、精密検査を受けたところ、がんと診断されました。
そのとき、マンモグラフィーに加えて初めて超音波の検査を受けたということで、医師からは「超音波検査ではがんがはっきりと映っているが、マンモグラフィーでは全く見えない」と説明されたということです。
幸い小さながんで転移しておらず、左胸の摘出手術を受けたあとはこれまで再発もなく、仕事に復帰できたといいます。
風間さんはがんが偶然見つかるまで、自分が高濃度乳房だとは知らなかったということで、「知ったときに鳥肌が立つくらい恐ろしくなった。がんの発見がなければマンモグラフィー検査を受け続けていたはずで、気が付かないまま、がんがどれだけ大きくなっていたかわからない。大切な体質のことをなぜ教えてくれないのか」と話していました。
「情報提供することが大切」
川崎市では去年4月、乳がん検診の結果の通知に高濃度乳房かどうかを示す欄を新たに設けたうえで、不安がある場合は医療機関に相談するよう勧めています。
川崎市の検診を行っている「聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター」では、高濃度乳房とわかった女性に対して、一般的に同じ年代の女性が乳がんになるリスクを説明し、本人が希望すれば自費で超音波の検査を行っています。
保険の適用対象外で、受診者の負担額は検査機関によって異なりますが、数千円から1万円余りだということです。
東北大学などのグループが40代の女性を対象に行った研究では、マンモグラフィーに超音波の検査を組み合わせると、乳がんの発見率が1.5倍に高まることがわかったということです。
川崎市の乳がん検診の在り方を検討する委員も務める福田護院長は、「家族に乳がんが多い人や自分の状態をきちんと確認したい人には超音波検査を勧めていて、川崎市では今のところ目立った混乱はない。ただし、自費での検査になるので、がんのリスクや検診の有効性を踏まえて一人一人が判断できるよう、情報提供することが大切だ」と話しています。
川崎市の検診を行っている「聖マリアンナ医科大学ブレスト&イメージングセンター」では、高濃度乳房とわかった女性に対して、一般的に同じ年代の女性が乳がんになるリスクを説明し、本人が希望すれば自費で超音波の検査を行っています。
保険の適用対象外で、受診者の負担額は検査機関によって異なりますが、数千円から1万円余りだということです。
東北大学などのグループが40代の女性を対象に行った研究では、マンモグラフィーに超音波の検査を組み合わせると、乳がんの発見率が1.5倍に高まることがわかったということです。
川崎市の乳がん検診の在り方を検討する委員も務める福田護院長は、「家族に乳がんが多い人や自分の状態をきちんと確認したい人には超音波検査を勧めていて、川崎市では今のところ目立った混乱はない。ただし、自費での検査になるので、がんのリスクや検診の有効性を踏まえて一人一人が判断できるよう、情報提供することが大切だ」と話しています。
ソース:NHK ニュース