胸

むな

「むね（胸）」の転。 多く他の語の上に付いて複合語として用いられる。

「～板」「～毛」「～苦しい」

胸

むね

(1)体の前面で， 首と腹との間の部分。 哺乳類では胴部の頭に続く部分で， 肋骨に囲まれ， 前肢があり， 他方は腹部に続く。 内部も胸腔は横隔膜により腹腔と仕切られ， 呼吸器や循環器がおさまっている。

「～を張る」

(2)（女性の）乳房。

「～を隠す」「～が小さい」

(3)心臓。

「～がどきどきする」「～がときめく」

(4)肺。

「～を病む」

(5)胃。

「～が焼ける」

(6)心。 また， 心の中。

「～のうちを語る」「～に思い描く」「採否は彼の～ひとつだ」

(7)衣服の胸もと。 えもん。

～が熱くな・る

じいんと感動がこみ上げてくる。

～が痛・む

(1)ひどく心配する。 心痛する。

「病状の悪化を考えて～・む」

(2)良心がとがめる。

「だました相手のことを考えると～・む」

～が一杯にな・る

喜びや悲しみを強く感じて他のことは何も考えられなくなる。

～が躍(オド)・る

期待や興奮でうきうきする。 心が弾む。

～が裂(サ)・ける

悲しみや悔しさなどで， 胸が破れるような苦しさを感じる。 胸が張り裂ける。

「～・けるような悲しみ」

～が騒(サワ)・ぐ

心が動揺する。 胸騒(ムナサワ)ぎがする。

～がす・く

心中のつかえがなくなる。 心が晴れやかになる。 痛快である。

～がつか・える

(1)食べた物が食道を通らない。

「～・えて物が食べられない」

(2)激しい感情で胸がふさがったようになる。

「～・えて何も言えない」

～が潰(ツブ)・れる

悲しみ・心配事などで胸がしめつけられるように感ずる。

～がつま・る

(1)食べた物が胸につかえる。

(2)感情が高ぶって胸が一杯になる。 胸が塞(フサ)がる。

～が轟(トドロ)・く

鼓動が激しくなる。 胸がどきどきする。 胸が高鳴る。

～が張り裂・ける

「胸が裂ける」に同じ。

～が晴・れる

胸のわだかまりが消え， 晴れ晴れする。

～が塞(フサ)が・る

憂鬱(ユウウツ)な気持ちになる。 胸がつまる。

～が焼・ける

胸焼けがする。

「食べ過ぎで～・ける」

～が悪・い

(1)気持ちが悪い。

(2)不愉快である。 むかむかして腹立たしい。 胸糞(ムナクソ)が悪い。

～に当た・る

思い当たる。 胸にこたえる。

「思ひかけぬ心地して， ～・りけるにや/徒然 41」

～に一物(イチモツ)

心の中にあるたくらみを秘めていること。

「～ありそうな顔つき」

～に納・める

心の中にしまい込んで， 口に出して言わない。 胸に畳む。

「～・めておく」

～に落・ちる

納得する。 得心がゆく。

～に聞・く

心の中でよく考える。

「自分の～・いてみよ」

～に刻・む

心にしっかり止めて， 忘れないでおく。

～にこた・える

心に強く感じる。 身にしみる。

～に迫(セマ)・る

思いが胸に満ちていっぱいになる。 強く感じる。

「～・るものがあった」

～に畳(タタ)・む

心に秘めておく。

「独り～・んでおく」

～に手を置・く

(1)よく思案する。

(2)（胸に手を置いたように）息苦しくなる。

「～・きたるやうに侍る/源氏（行幸）」

～の痞(ツカ)えが下・りる

心の中にあった悩みや苦しみがなくなる。

～の火

胸中の思いの激しさを火にたとえていう語。 燃える思い。

～の病(ヤマイ)

胸部疾患， 特に肺結核のこと。

～拉(ヒシ)・ぐ

「胸が潰(ツブ)れる」に同じ。

「～・げたるやうにて， おぼつかなく残りゆかしとも/狭衣2」

～塞(フタ)が・る

「胸が塞(フサ)がる」に同じ。

「かやうにておはせましかばと思ふにも， ～・りておぼゆ/源氏（夕顔）」

～を痛・める

心を悩ませる。

～を打・つ

感動させられる。 感嘆する。

～を躍(オド)ら・せる

喜びや興奮で胸をわくわくさせる。 心がときめく。

～を貸・す

実力の上位の者が， 実力の下位の者の相手をしてやる。 もと， 相撲の用語。

～を借・りる

実力の下位の者が実力の上位の者に相手をしてもらう。 もと， 相撲の用語。

～を焦が・す

ひどく思いわずらう。 思いこがれる。

～を摩(サス)・る

(1)怒りの気持ちをおさえる。

(2)ほっとする。 胸をなでおろす。

～を叩(タタ)・く

相手の依頼を快諾したとき， 自信をもって引き受けたときの動作。

～を突・く

(1)はっとする。 驚く。

「娘の言葉にはっと～・かれる」

(2)思いが急につのる。

「わびしさが～・く」

～を撫(ナ)で下ろ・す

安心する。 ほっとする。

「安堵(アンド)の～・す」

～を弾(ハズ)ま・せる

「胸を躍らせる」に同じ。

「～・せて入学式を待つ」

～を張・る

胸をそらせ， 自信に満ちた態度をとる。

「～・って生きる」

～をふくらま・せる

胸が期待・希望でいっぱいになる。 希望に満ちている。

「希望に～・せた新入生」

～を病(ヤ)・む

肺結核になる。 胸をわずらう。

～を割・る

胸中を隠さず打ち明ける。 胸襟(キヨウキン)を開く。

「～・って話す」